3月末から4月初めの明け方の東天では、金火土の3大惑星が双眼鏡の視野に収まるほど接近して注目されています。 少し遅れて下から木星も加わってきました。
ここでは4月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
視直径が5秒になり、少し大きくなりました。 高度は上がらず、明け方の薄明の空での観測が続いています。 後から昇ってきた木星に追い抜かれるのも間近です。 Lsはほぼ200°になり、南半球は夏至へと季節が進んでいます。
最大径だった南極冠は、わずかに小さくなってきています。 シーイングがよいと眼視でもよく見えます。 周りにはダークフリンジと呼ばれる暗帯が取り巻き、極冠を目立たせています。
高解像度の画像では縮小を始めた極冠の縁に光点ができています。 また、極冠の中央部はやや暗く、明るい部分がドーナツ状に見えています。 南極冠は真っ白ですが、北極はかなり黄色っぽく明るく見えます。
3月12日に、またエッジダストストームが発生しました。 今シーズン3回目です。 発生場所はHellasの南で、図1の光斑は前日に南極冠の縁にできたものが、北に向かって噴出した姿です。
翌日の3月14日にはこの位置からさらに北に拡散しながら進みました。 残念ながら、その後の変化は、観測がなく追跡できませんでした。 極冠はまだ大きいため、エッジダストストームは今後さらに回数が増えると思われます。 極冠のどの経度で発生するかに注意した観測が必要です。
火星が大きくなり早く昇る夏頃には観測しやすくなりますが、南極冠はほとんど最小になっていますから、エッジダストストームは、今から夏までが観測の好機です。
暗色模様については、条件の良い観測が少なく、まだはっきり断定できませんが、気になる場所をあげておきます。 Syrtisの東側で、MoerisからNepenthesがやや暗化しています。 過去には大暗部になっていたところです。 Daedaria(W120, -30)にもやや暗化した部分ができています。 Mare Sirenumの先端がそのまま伸びた形です。 2020年のダストストームの後で暗くなりましたが、やや北に拡大しているように見えます。
図2は、青フィルターによる画像です。 左側に白く写っているのが、山岳雲で、一番上がArsia山にできた雲です。 Arsia山の雲は、これからしばらくの間よく目立ちます。 その北側にはPavonis Mons(120W, +3)がArsiaよりも明るく見えます。 日没に近づくほど明るなっていく様子が見られます。 火星時間の何時ごろから見えてくるかを観測したいものです。 北極付近も、ところどころに雲が見られます。 色に注目して観測しましょう。
[図1] Hellasのエッジダストストーム |
矢印で示した明部がダストストーム。中央下の暗部はSyrtis Major。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35p) |
[図2] 火星の山岳雲 |
青画像。矢印の先の明部がArsia山。左下にはPavonis Monsも見える。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35p) |
2022-23シーズン最初の観測は、3月31日のクライド・フォスター氏(南アフリカ)でした。 国内では4月3日の宮崎勲氏(沖縄県)が最初です。 まだ観測はわずかで、木星面全周をカバーできていません。
注目される北赤道縞(NEB)南部の活動は、依然として続いているようで、大きな暗部が並んで乱れているのがわかります。 また、NEBの幅も広く見える画像が多く、NEBの濃化復活が進んでいるように見えます。 ただし、ベルトの太さはシーイングによって見え方が大きく変わるので、さらなる観測を待って確認する必要があるでしょう。
その他の領域も昨シーズン末と同じような状況にあるようです。 大赤斑(GRS)はII=12°付近に見られます。 赤外(IR)画像のため、色調はわかりません。 南には南温帯縞(STB)が接しています。 大赤斑の前方が淡くなっているので、境界付近に永続白斑BAが位置すると思われますが、確認できていません。
後方の南赤道縞(SEB)は大きく二条に分かれていて、SEBZが明るく見えています。 南組織(SEBs)には濃淡があるので、暗斑群の活動が続いているようです。 一方、II=200°台のSEBは幅広く一様なベルトになっています。 カラー画像で見ると、赤道帯(EZ)は一様に明るく、昨シーズンのような茶褐色の色調は感じられません。
北半球を見ると、北温帯縞(NTB)が淡く見えています。 北北温帯縞(NNTB)も淡いようですが、II=120°から後方では長い断片が見られます。
[図3] 今シーズンの木星面 |
NEBが濃く幅広く見える。右端に大赤斑がある。EZが明るくなっていることにも注目。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm) |
木星よりもひと足先に新しいシーズンに入った土星は、環の傾きが+14°と、合の間に4°も小さくなりました。 土星本体の3分の2くらいの幅になり、南北に本体が大きくはみ出して見えます。 イラストなどで見かける、バランスの取れた最も土星らしい姿といえるでしょう。
まだ解像度は低いのですが、ベルトなどの配置は昨シーズンと変わっていないようです。 数少ないカラー画像で見ると、赤道帯(EZ)がクリーム色で明るく、ベルトでは赤茶色の北赤道縞(NEB)が最も目立っています。 その北側には北温帯縞(NTB)が濃く見え、間にはNEB北組織(NEBs)と思われる淡いベルトが認められます。
特筆されるのは、北緯60°台に見られる赤茶色のベルトで、昨年に赤みが強くなった北北温帯(NNTZ)が暗くなってベルト化したようです。 暗い北極周辺よりも濃く見えています。
[図4] 今シーズンの土星 |
環の傾きが小さくなり、土星本体が南北に大きくはみ出して見える。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm) |
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