木星は11月3日にみずがめ座で衝となりました。 翌日の4日には土星がみずがめ座で留となり、順行に転じました。 今秋は晴天続きで、シーイングも比較的良い日が多くありました。
ここでは11月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
大赤斑(GRS)の南を永続白斑BAが通過中です。 BAは相変わらず不明瞭ですが、高解像度の画像では輪郭がわかるようになりました。 今回の会合ではさらに南南温帯縞(SSTB)の白斑A4も加わり、10月末には大赤斑、永続白斑BA、SSTBのA4という木星面を代表する3つの高気圧的渦が3段重ねに並ぶという、大変珍しい光景が見られました。 大赤斑とBAの会合は、以前はほぼ2年おきでしたが、2019年以降はBAが加速したため間隔が短くなり、今回は1年7ヵ月しかかかっていません。 この間のBAの自転周期は9h55m15sで、1970年代と同程度のスピードです。
大赤斑はII=45°にあり、先月とほとんど変わっていません。 10月初めに南赤道縞(SEB)南縁を後退するリングが相次いで赤斑湾(RS bay)に進入し、フレークが発生しました。 この影響によって大赤斑周囲の暗部や前方のストリーク(暗条)が再び濃くなりました。 暗部は11月になっても明瞭で、ストリークは伸長して40°以上になり、南熱帯紐(STrB)と呼べるほどです。 大赤斑本体は相変わらずオレンジ色で大きな変化はありませんが、眼視では少し明るい色合いになった印象を受けます。
北赤道縞(NEB)は南縁を中心に活動的な状態が続いていて、各所で乱れた白雲領域(リフト)がベルト中央部に伸びています。 II=210°の局所的拡幅部では、10月10日頃に白斑が急に発達を始め、リフトが形成されました。 北緯13°と他のリフトの白斑よりも北寄りで、湧出した白雲は拡幅部にある低気圧性の明部(昨年見られたベルト北縁のループ模様の名残)の前端に沿って北へ流れ、北熱帯(NTrZ)に大きなリング暗斑を形成しました。 リフトは前進しながら前後に白雲を伸ばし、月末には前方にある大きなバージに白雲を巻き付けています。 このような活動の結果、拡幅部は北縁の膨らみが小さくなって、11月初めには通常の幅に戻ってしまいました。 同じようなリフト活動は局所的拡幅が始まった時も見られましたが、今回は拡幅を終息させるという、正反対の現象になりました。
[図1] 大赤斑とBAとA4の会合 |
大赤斑の上に永続白斑BA、その上にSSTBのA4が三段重ねに並んでいる。右下は拡大図。真ん中のBAが不明瞭だが、丸い輪郭が見える。撮像:石橋力氏(神奈川県、31cm) |
[図2] NEBのリフト活動と拡幅の終息 |
拡幅部前端付近でリフトが発達し、NTrZにリング暗斑が形成された。これらの活動により、ベルト北縁の膨らみが小さくなり、通常のベルト幅に戻った。 |
[図3] 木星面展開図(11月2日〜3日) |
今シーズンの衝における木星面。11月2日〜3日の8画像から作成。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)、宮崎勲氏(沖縄県、40cm)、クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm) |
衝から2ヵ月余りが過ぎて、土星本体右側の環の上には本体の影が大きく落ちています。 最近の画像を見ると、環が本体に比べてとても暗く見えます。 これは衝効果が消えただけでなく、地球から見た傾き(B)よりも、太陽との傾き(B')の方が2°以上小さいことも影響しているためです。 スポークの報告は10月10日以降も4件あり、これまでと同様すべて丸い形でした。 スポークは過去に何度も観測されていますが、名前の由来となった放射状のパターンと異なる形状のものは、今年が初めてです。
土星面では北赤道縞(NEB)が幅広く、次いで北温帯縞(NTB)が目立っていますが、中間にも細い縞が見られます。 これは淡化していたNEBの北組織(NEBn)と思われます。 ゾーンでは赤道帯(EZ)が明るいクリーム色で、その他はゾーン毎に色調が異なっています。 最近はベルト内部の小白斑などが南半球側でも観測されるようになっています。 南半球の大気が活動的になってきたようです。
[図4] 今月の土星 |
土星本体の影が環の上に大きく落ちている。環が本体に比べてとても暗く見える。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm) |
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