天文ガイド 惑星の近況 2025年4月号 (No.301)

堀川邦昭、安達誠


火星が1月12日にかに座で最接近となりました。 火星とおうし座を逆行中の木星、おおいぬ座のシリウスを結ぶと、冬の大三角の外側にさらに大きな三角形ができています。 「冬の超大三角」と勝手に名づけましたが、いかがでしょう。 一方、夕暮れの空では金星と土星が輝いています。

ここでは1月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

火星は最接近となりました。 ただし、今回は小接近で、視直径は14.6秒止まりです。 おまけに、季節的にシーイングに恵まれにくいのですが、遠日点に近づいている火星面では、この季節特有の現象が見られます。

北極冠は、じわじわと縮小を始めています。 極冠は氷でできているので、白く明るいイメージがありますが、氷がむき出して見えているのではなく、白雲に覆われているらしいのです。

よく撮れた画像を点検すると、極冠の縁は南に膨らんだり小さくなったりと変化しています。 12月から1月は、雲の晴れ間から極冠が見えたり、小規模なダストストームが見えたりしています。

12月26日には、熊森氏(大阪府)が北極冠の縁に切れ目を観測しました(図1)。 この位置にはKounowskyという目立つクレーターがあります。 この日だけ雲が晴れていたようで、その後は見られませんでした。

12月下旬から、Aurorae Sinus付近を中心に白雲(赤道帯霧)が拡がるようになってきました。 例年と同じ時期(Ls=30°付近)です。 Auroraeの東部や南部は、大規模な地溝帯で、白雲の範囲は地形と関係があるようです。 赤道帯霧は地表近くにではなく、上空の雲といわれています。

雲の詳しい様子を知るには、青(B)フィルターによる観測が必要で、それも450nmよりも短い波長が記録できるフィルターが必須です。 画像にはフィルターの情報を必ず入れてください。 きわめて重要な情報です。

この時期になると、成層火山など、標高の高いところに白雲が見えてきます。 有名なオリンピア山など、はっきりした姿が記録されています。 シーイングが悪いと大きな広がりに写りますが、好条件下では小さな白い点として記録されます(図3)。

これからは、極冠の縮小に伴う極周辺のダストストームの発生にも注意したいものです。

[図1] 北極冠の縁に現れたクレーター
矢印の先にある極冠内部の灰色の斑点がKounowskyクレーター。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)
[図2] 青画像で捉えられた赤道帯霧
中央付近を東西に伸びる淡い明帯が赤道帯霧の見え始めの姿。青画像。下の白いところが北極冠。撮像:井上修氏(大阪府、28cm)
[図3] 火星の火山上空にできた白雲
Tharsisなどの火山の上にできた雲が白く見える。青画像。撮像:ギャリー・ウォルカー氏(米国、25cm)

木星

木星面最速のジェットストリームの攪乱現象である、NTBs jetstream outbreakが発生しました。 この現象は淡化消失した北温帯縞(NTB)に現れた白斑(Leading spot)が、超高速で前進しながらNTBを短期間で濃化復活させます。 今回は2020年8月以来、4年5ヵ月ぶりの発生です。

白斑(LS#1)は1月10日、I=168°、北緯24°で発生しました (この白斑は赤道帯(EZ)の模様ではありませんが、高速で前進するので体系Iを使います)。 宮崎氏(沖縄県)のメタン画像では、隣接する北赤道縞(NEB)北部の白斑よりも薄暗い白斑でしたが、1自転後には可視光でも明るくなり、翌日には筆者も眼視で見ることができました。

LS#1は体系Iに対して1日あたり-5°で前進しながら大赤斑の北側を通過して、28日現在I=83°に進んでいます。 後方には青黒い暗斑群が形成され、NTBが濃化し始めました。 outbreakの白雲が入り込むなど、拡幅中のNEB北縁にも影響が及んでいます。 さらに27日にはLS#1の前方に、別のメタンブライトな白斑(LS#2)が出現しました。 今後2〜3ヵ月で、outbreakは木星面を周回し、NTBを濃化復活させることでしょう。

mid-SEB outbreakは長さ50°ほどの乱れた白雲領域となり、活動を続けています。 内部は混沌としていて、個々の白斑を識別することは困難になりました。 当初はII=320°台に後端があり、白雲の発生源となっていましたが、今年に入ると領域全体が1日あたり-1.5°で前進するようになりました。 現在はII=260°前後に位置しています。

赤道帯南部(EZs)の攪乱領域(SED)は全周に広がって、至るところで南赤道縞(SEB)北縁の突起や長く伸びたフェストゥーン(festoon)などが見られます。 本陣と呼ばれる後端部は、EZsの白斑が明るいものの、あまり目立たなくなっています。 1月末には再び大赤斑の北側を通ります。

大赤斑(GRS)はII=68°で停滞しています。 後方のSEB南縁にフックと呼ばれる特徴的な突起が発達していますが、前方に南熱帯紐(STrB)を形成するほどの勢いはないようです。 永続白斑BAはII=150°にありますが、薄茶色で不明瞭です。

[図4] NTBs jetstream outbreakの発生
中央のLS#1が大赤斑の北側に差し掛かっている。後方には暗斑群が形成されている。撮像:鈴木邦彦氏(神奈川県、19cm)
[図5] mid-SEB outbreakの状況
SEBに乱れた白雲が広がる。領域全体が-1.5°/dayでぜんしんしている。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)

前号へ INDEXへ 次号へ