STrZの白斑と大赤斑の会合

1997年3月7日

月惑星研究会 東京本部・関西支部




 今シーズンの木星面の注目点はSTrZ(南熱帯)の白斑とGRS(大赤斑)との会合であろう。この白斑は1987年以来継続して観測されているもので、LEBS(永続白斑)とGRSを除くとこのように長寿命のものはこれまで観測されていない。最近はSEBs(南赤道縞南組織)に湾入していることから、SEBs Bayとも呼ばれ、小口径の望遠鏡でも観測されている。白斑は第II系に対してゆっくりと後退していたが、いよいよ今シーズンにはGRSとの会合が見られそうだ。どのような変化が起きるのかを楽しみにしている人は多いことだろう。

 長谷川 均、田部 一志、竹内 覚、堀川 邦昭の各氏に、今回の現象について解説をお願いした。この現象の知識を深めて、眼視スケッチからCCDイメージまで幅広く観測に取り組んで、この会合現象に注目してみよう。(伊賀)

画像説明
左上:HSTによる画像(1996年10月)
右上:Pic du Midi天文台 S2Pカメラ(1997年 2月20日)

STrZ(南熱帯)の白斑と大赤斑の会合

長谷川 均
 木星の縞模様は、大気の運動と木星の速い自転によってできていると考えられている。そのエネルギー源も木星内部からのものが大きいと言われている。ここまでは多くの研究者で意見が一致するところであるが、ここから先は混沌としている。さらには、その縞模様構造の上に見られる模様に至ってはもっとわかっていない。木星の観測が連続して行われるようになったのは19世紀後半からである。まだわずか100年とちょっとの記録しか残っていない。木星の公転周期は約12年であり、地球に例えればせいぜい10年ぐらいが経過したに過ぎない。これまでに記録された様々な現象は今でも未解明のものが多い。そして、まだこれから先も人類にとって初体験の現象にでくわす可能性もある。

HST GRS JPEG 6KB
ボイジャー1号による大赤斑の
クローズアップ
Galileo GRS JPEG 6KB
ガリレオ衛星の合成画像
雲の高さをカラーで表現
 木星の謎の一つにSTrZの大赤斑の謎がある。地球を2個ほど飲み込んでしまうほどの巨大な大気の渦巻ということまではわかってきたが、そのエネルギー源がなんであるかは今でもわからない。木星には他にも似たような渦がある。STZ(南温帯)の永続白斑を除けばみな短命である。これらの渦はみな高気圧性の回転をしていて、大気の高いところまで雲が飛び出していることが近赤外線波長領域にあるメタンや水素と言った分子の波長での観測からわかっている。

 今シーズンの木星には、大赤斑とほぼ同じ緯度のSTrZに明るく輝く白斑がある。大赤斑と同じようにSEBs(南赤道縞南縁)に湾(へこみ)を形成している。この白斑もメタンや水素の波長での観測から雲が高いところまで突出していると考えられる。おそらくは同じような性質をもった渦だろうと考えられる。これまでの観測ではこの白斑と大赤斑との距離が次第に狭まっていることがわかっている。このまま行くと1997年??月頃には大赤斑と衝突してしまう。その時にどのような現象が起こるのは全く予想できない。木星のような大気の流れを研究する学問を総称して惑星流体力学とかもっと広くは回転流体力学というが、この世界でも、こうした大赤斑規模の渦どうしの衝突現象というのは観測的にはあまり例がない。そこで、この現象を系統的に観測して、木星の大気の謎の解明についての手がかりを得ようというのがこのキャンペーンの趣旨である。

 アマチュアによる木星の観測技術も冷却型CCDカメラの普及で進歩してきた。特に画像処理技術によってシーイングサイズに近い細部が描写されるようになった。しかし、画像を測定してそれを木星大気現象の解明に役立てようという人がまだ少ないのは残念である。惑星観測者の集まりをスケッチや写真の腕比べで終らせてしまうにはもったいない。観測はある程度目的を絞って行う方が効率がよいし、また長続きもする。観測しっぱなしで終ってしまうことも少ない。木星の現象は1994年に起こった彗星衝突を除けばそれほど派手なものはない。今回のSTrZの白斑もそれと注目しなければ見逃してしまう規模の現象である。しかし、この白斑に注目して観測し、その結果について一緒に議論するというのは木星研究の将来にとってもよいことだと思う。これが契機となって惑星大気物理に興味を持つ人が増え、さらには観測の結果をまとめて論文にまでまとめられる人材が育てばと思う。



木星STrZの白斑の大赤斑との衝突

田部 一志
 1996シーズンの始め頃からSEBsに湾を作るSTrZの白斑が目立ってきている。このような白斑は過去に数回観測されたことがあるが、衝突によってどのような現象が起こるのかについては全く観測記録がない。衝突については月惑星研究会(東京本部及び関西支部)でも集中的に観測する必要がある。昨年来この白斑はPic du Midi天文台やGalileo探査船及びHabble Space Telescopeでも観測され注目を集めている。


堀川邦昭氏の木星展開図
1996年7月後半のスケッチから作成。
大赤斑の左側(西)の白斑(II系8°)が近づいている。

■観測にあたっての手引き■

1)大赤斑と白斑はどこに見えるか?

Drift JPEG 2KB
大赤斑と白斑のドリフト・チャート
堀川邦昭氏作成
 大赤斑はII系60°付近にあってわずかに経度増加方向へ移動している。移動量は+0.01°/dayときわめてわずかであるのでほぼII系60°付近に停滞していると見て良いだろう。一方SEBsにBay(湾入)を作るSTrZの白斑(white spot)は現在II系30°付近を0.14°/dayのスピードでやはり経度増加方向へと移動している(右図のドリフト・チャート参照)。この移動量(ドリフトともいう)のままで大赤斑に近づいて行けば、

  λ(RS)=58.2772+0.009847×T
  λ(bay)=3.39246+0.135985×T

ここでTは昨シーズンの衝(1996年7月4日)からの経過日数である。これを解けばT=435となり1997年9月12日が中心の会合日となる。相互作用が始まるのはbayの後端がRSBayの前端に到達した直後であるからRSBayの直径を22°、STrZの白斑の直径を12°と仮定すると、

  λ(RS)=47+0.009847×T
  λ(bay)=9+0.135985×T

となり、T=285日±となる。これは意外に早く1997年4月15日頃には衝突が始まると考えられる。

2)いつ見られるか?

Table JPEG 5KB
大赤斑の見える時刻予報
 別表にII系60°がCM(中央子午線)を通過する時刻を掲げた。分の単位なので約0.6°の誤差があるが、白斑についてはこの数時間前から木星面に現われているはずなので注意して観測して欲しい。


■衝突によって予想される現象■

 次の3通りのパターンが考えられる。
(1)すり抜ける(STrDなどと同じ。孤立波的)。
(2)RSに飲み込まれる(SEBsの高速後退斑点と同じ)。
(3)反発して止まってしまう(両方とも高気圧性の渦なのでLEBSの場合の
   ように反発して合体しない)。

それぞれについて過去の例など交えて少し詳しく解説する。

(1)すり抜ける場合


(1)まっすぐにすり抜ける

(1')RSを避けてすり抜ける

(2)RSに飲み込まれる

(3)反発して止まる
 大赤斑と南熱帯撹乱の会合が過去数回観測されている。その結果お互いに何の影響をも与えないですり抜ける現象が観測されている。これは気象力学的には大赤斑も南熱帯撹乱も孤立波(solitary wave,soliton )と呼ばれる非線形現象であると解釈することによって説明される。しかも両者とも高気圧的循環を持っており今回の場合と同じである。

※私(伊賀)は、白斑は大赤斑の北側を回り、SEBsの気流に乗ってそのまま通り越してしまうのではないかと考えている。これは竹内氏の解説の「2つの高気圧的渦の相互作用」の派生だが、すり抜けるという分類からあえて(1')の意見として掲載した。

(2)RSに飲み込まれる

 Voyagerが1979年に木星に接近して撮影した大赤斑付近のムービーにはSEBsを後退して来る暗斑や白斑が次々と大赤斑に飲み込まれる様子が写し出されていた。巨大な高気圧性の渦である大赤斑がやはり高気圧性の小さな渦を飲み込むことによってその長い寿命を維持しているとする説の根拠になっている。飲み込まれた渦は大赤斑内部で消化され、大赤斑の一部となってしまう。この場合は渦の大きさも深さも全く違うので参考にはならないかも知れないがこのような現象となる可能性も捨てきれない。

(3)反発して止まってしまう

 南温帯に50年以上も永続している永続白斑(Long Enduring Bright Spot)は大赤斑に次ぐ長い期間観測されている高気圧性の白斑である。発生した1930年代末には80°近い長経を持っていたが徐々に小さくなってここ数年は7〜8°である。発生以来50年の間に何度かお互い接近したことがあったが接触することは無くあたかも斥力が働いているかのようであった。ただし永続白斑は3つとも同じ帯流に属しているので本来あまり近づく事はない。ここ数年の接近した姿がまさに異常と感じられる由縁である。STrZの白斑と大赤斑との間にも斥力が働く可能性がある。その場合本来属している帯流の違いによって無理に近づこうとする力との間に複雑な相互作用を起こす可能性がある。

 南熱帯撹乱(STrZ南部のダークストリーク)の発生要因の1つは大赤斑と永続白斑の接近によるらしいことが複数の研究者によって指摘されている。また大赤斑と永続白斑がお互いの移動スピードに影響を与えたらしい観測結果も過去に得られている。今回の場合止まってしまうことは無いにせよ複雑な相互作用が見られる可能性が最も高いと思われる。


木星大気の渦同士の相互作用について

竹内 覚
大赤斑(RS)もSTrZ ovalも、どちらもその渦としての構造は、よくわかっていない。そのためRSとSTrZ ovalの相互作用を予測するにしても、本当に両者の力学構造に基づいて計算をおこなうことはできない。今のところはNH3雲レベルの風向、つまり帯状流の向きと渦の回転方向から、過去の例を参考にしながら、推測するだけである。

予想される現象としては、経度方向の位置関係から考えると、前節で述べた、1) すり抜ける、2) 合体する、3) 反発する、の3つに分かれるが、流体力学的な相互作用という視点から見ると、 1a) ソリトン的相互作用、1b)-2) 2つの高気圧的渦の相互作用、3) 2つの高気圧的渦と中間の低気圧的領域の相互作用、と分類分けすることができる。以下にそれぞれの場合について解説する。

1a) ソリトン的相互作用


1902年の南熱帯撹乱
The Giant Planet Jupiter(p201)から掲載
1901-1939年の南熱帯撹乱(STr dist.)とRSの相互作用で見られたすり抜け現象は、これがソリトン(孤立波)と呼ばれる非線形波動同士の衝突と似ている。ソリトン同士の衝突では、いったん合体するものの再び分離し、その後はまるで何も相互作用は無かったかのように二つの波動は振る舞う。そのためRSやSTr dist.は共にソリトン的流体現象ではないか、と考えられた (Maxworthy and Redekopp (1976), Maxworthy et al. (1978) )。しかし単純化された方程式系の解ならともかく、現実の複雑な大気の中でのこのようなソリトンの存在やソリトン同士の衝突があり得るのか、その後の研究は進んでおらず(木星に関しては)、未だ不明である。

1b)-2) 2つの高気圧的渦の相互作用

RS、STrZ ovalは共に高気圧的回転をしている渦である。よって両者の衝突は流体力学的には、2つの渦の相互作用である。昔から渦同士の合体現象は木星ではよく観測されているが、詳細なデータはVoyagerによる高分解能画像によって初めて得られた。


Voyagerによる
大赤斑周辺の動画

アニメーションから
スナップを合成(伊賀)
RS周辺に関しては詳細な観測結果がある (Smith et al.(1979)、これは動画にもなったので見たことのある人も多いだろう)。これによるとSTrZnからSEBsの緯度帯に沿って後退してきた渦は、RSのbayに沿って北側に移動する。この後RSの縁に沿って渦が半周ほど回転する間に、RSに飲み込まれる斑点もあるが、一部はそのままRSの西側のSEBsにすり抜ける。またRSが渦を飲み込むが、その直後に渦雲の一部をフィラメント状の形で放出することも多い。このような渦同士の合体後の一部放出は、下記の研究(MacLow & Ingersoll)でも多く見られた現象である。

もう少し小さい渦同士の相互作用の研究についてはMacLow and Ingersoll(1986)があるが、これによると直径数百km以上の渦同士(RSや永続白斑は除く)の相互作用を調べたところ、ほとんどの場合(27のうち23)ふたつの渦は合体した。残りの4ケースについては、渦はお互いに相手のまわりを回転してすれ違った。これらの例で相互作用した2つの渦の回転は同じであった。ただしこれらの例は、RSやSTrZ ovalよりはるかに小さいサイズの渦であり、この解析がそのまま今回の場合に適応できるかどうかはわからない。

また今までにおこなわれた数値計算では、Williams and Wilson (1988)やDowling and Ingersoll (1989)がある。これらは木星大気の扱い(特に下層大気)が違っているが、渦同士の相互作用の点では、小さい渦が合体していって最後に大きい単一の渦(RS状)ができている。逆に言えば、RSは小さい渦を食って生きているわけで、STrZ ovalもRSの食料になるのかもしれない。

このように2つの渦の相互作用では、多くの場合渦の合体がおきており、時々渦のすり抜けが起きるのが、一般的と考えられる。

3) 2つの高気圧的渦と中間の低気圧的領域の相互作用


HSTによる白斑群
1996年10月
1995年のシーズンから、STB周辺では3つの永続白斑が非常に接近して並んでいる。上記の渦の相互作用から考えれば、永続白斑同士で合体が起きても不思議はないはずである(永続白斑は高気圧的渦)。しかし実際には、そのままの距離を保っている。これは永続白斑(と他の高気圧的渦)の間の、やや赤道よりのSTBに低気圧的渦が存在して、この逆回転の渦が高気圧的渦同士の接近を妨げているからである。このような渦の配置では、衝突合体は起こらない。


永続白斑の気流
反時計回りが高気圧的渦
時計回りが低気圧的渦
伊賀作成(木星会議'96から)
もしSTrZ ovalとRSの間に低気圧的渦が形成されれば、これらの渦はその配置を維持し続けて、衝突は起こらないであろう。または何らかの理由によりSTrZ ovalの後退(西向のき運動)が停止すれば、RSとの中間領域は東西の2つの高気圧的渦の影響で、低気圧的渦が形成されるかもしれず、そうなればやはりこの配置は維持される。低気圧的渦は、場合によってはSEBsが極よりに盛り上がった突起のように見えるかもしれない。

ただしこの配置のまま永遠に続くはずはなく、いずれは中間の低気圧的渦が消失して2つの高気圧的渦が衝突するか、またはSTrZ oval自身が消失するかするだろう。

最後にこの場合の1つのvariationとして、STr dist.発生の可能性を指摘しておく。SEBsを後退してきた白斑暗斑や、SEBZの暗い雲が、RS前方に停止したSTrZ ovalの影響を受けて、STrZに流れ込み、さらにこれらがSTBnよりの気流にのって前進(東向き運動)をしたとすれば、これは正に南熱帯撹乱(STr dist.)である。Voyager 1号の木星接近時(1979年)のRS前方は、かなりこの状態に近いといえる。可能性は低いかもしれないが、興味深い説でもある。


結果がどうなるにせよ、このような渦同士の相互作用の時期をあらかじめ予想できることは珍しい。様々な手段で観測をおこない、現象を明らかにしたい。



References

Dowling, T. E., and A. P. Ingersoll (1989),
Jupiter's Great Red Spot as a shallow water system,
J. Atmos. Sci., 46, 3256-3278.

MacLow, M.-M., and A. P. Ingersoll (1986),
Merging of vortices in the atmosphere of Jupiter:
An analysis of Voyager images, Icarus, 65, 353-369.

Maxworthy, T., and L. G. Redekopp (1976),
A solitary wave theory of the Great Red Spot and other pbserved features
in the Jovian atmosphere, Icarus, 29, 261-271.

Maxworthy, T., L. G. Redekopp, and P. D. Weidman (1978),
On the production and interaction of planetary solitary waves:
Applications to the Jovian atmosphere, Icarus, 33, 388-409.

Smith, B. A., et al., 1979,
The Jupiter system through the eyes of Voyager 1,
Science, 204, 951-972..

Williams, G. P., and R. J. Wilson (1988),
The stability and genesis of Rossby vortices,
J. Atmos. Sci., 45, 207-241.


過去の観測から

■1996年の観測から

STrZの白斑がシーズンの初めから、次第にGRSに近づく様子が観測されている。月惑星研究会のメンバーの観測スケッチやCCDイメージ、さらにHSTやPic du Midi天文台から公開されている画像を用いて、この白斑を追跡してみた。(伊賀)

STrZの活動

『1996年の木星面』の報告書(安達 誠・伊賀 祐一)

■1995年以前の観測 −東亜天文学会誌『天界』から−

天界 776号(1990年1月):木・土星課月報(10月) 宮崎 勲
 ところで、ここ数シーズン存続しているSTrZの白斑は、11月も体系II:150°付近に観測されている。この白斑は北側半分がSEBにbayを形成して侵入していることから、SEBの大規模な淡化によって、その自転周期が如何に変化したか関心が持たれていた。OAAの観測に基づき、昨シーズンの1988年7月から1989年3月までと、今シーズンの1989年8月から11月までのSTrZの白斑の自転周期を表1に、ドリフトチャートを図1に示す。今期は経度測定数が少なく自転周期は今のところ暫定的な値であるが、両シーズンとも白斑の体系IIに対する後退速度は極めて遅く、自転周期に大差は見られなかった。一方SEB淡化後の今シーズンの白斑の経度は、1988〜89年の経度変化量から計算される予想経度の±4°以内に測定されており、昨シーズンのドリフトチャートの延長線上に無理なく乗っている。また、表2はこの白斑の長径の平均値であるが、SEB淡化前後でその値に有意な差は認められない。これらの観測結果から、STrZの白斑は、SEB南縁に侵入していながら自転周期面では、SEBの淡化の影響を受けていないと考えられる。この白斑は、木星大気中で暗褐色のSEB本体よりも高いレベルに位置していると思われるが、その部位での帯流速度は、淡化の前後で変化していないようである。

天界 778号(1990年3月):木・土星課月報(1月) 宮崎 勲
 SEBはSEBZが木星面で最も明るいzoneとなり、南北両組織の淡化が更に進んで小口径や悪条件下での検出が難しくなった。SEBZが明化したこともあって、STrZが薄暗く感じられることがあり、特に体系II:150°より後方で輝度が低いことを堀川氏が指摘している。この150°のSTrZの経度には、長期存続型の白斑(『天界』1990年1月号月報参照)とそれに付随する暗柱であり、1月中旬に暗柱が幅を広げ淡い暗部になるのが観測されている。

天界 801号(1992年2月):木・土星課月報(12月) 宮崎 勲
 この他、目立った模様として体系II:230°のSTrZ〜SEBs南縁の中型の白斑があげられる。この白斑は寿命の長い模様で、1986年から存続していると思われる(『天界』1990年1月号、木・土星課月報参照)。

天界 802号(1992年3月):木・土星課月報(1月) 宮崎 勲
 また、体系II:240°付近のSEBsには、浅い湾入が観測されている(堀川・宮崎・張替氏)。これは、1987年に発生し、長期に渡り存続しているSTrZの白斑が形成した模様と思われる。

天界 814号(1993年3月):木・土星課月報(12-1月) 宮崎 勲
 なお、1987年に現われ、前シーズン1992年6月まで観測されたSEB南縁〜STrZの長期存続型白斑は、今期は今のところ検出されていない。健在ならば1月上旬は体系II:325°付近、3月上旬で340°付近に位置すると予想される。

天界 815号(1993年4月):木・土星課月報(1-2月) 宮崎 勲
 2月上旬、体系II:325°付近のSEBsにごく浅い湾入と、その南側のSTrZにアーチ状の淡い暗部が捉えられた。位置及び形状から、1987年から長期にわたり存続しているSTrZの白斑と考えられる。この白斑はSEB領域が暗いと捉えやすいが、現在のようにSEBが淡化すると検出が極めて困難になる。STrZにはこの他、体系II:340°に小さいながら濃くはっきりした暗斑や、体系II:100°に淡い暗柱が観測された。

天界 830号(1994年7月):木・土星課月報(4-5月) 宮崎 勲
 また安達氏は5月6日、体系II:306°のSTrZに明るい円形の白斑を観測している。この白斑は、少なくとも3月から存続しており、体系IIに対して殆ど動いていない。口径15cmクラスでは検出が難しいようだが、口径30cmクラスではかなり目立つ模様である。この他にもSTrZには、白斑様の明部が所々でとらえられている。

天界 841号(1995年6月):木・土星課月報(3-4月) 宮崎 勲
 また、体系II:130°及び300°にはSEB南縁に浅いながら際立ったbayがあるのを堀川・宮崎・浅田各氏が見ている。この湾入は、STrZに中心を置く中型の白斑が形成した模様と思われる。

天界 842号(1995年7月):木・土星課月報(4-5月) 宮崎 勲
 SEBの南組織の活動は5月も活発で、各観測者とも多数のprojection或いは暗斑を捉えている。河北氏の展開図では、体系II:100°より後方で十数個の暗斑が描かれているが、宮崎のCCD像ではRS直後の体系II:60°付近から、SEBsにおびただしい数の暗斑が群がっている。これらの暗斑は、経度増加方向へ向かう程、暗斑と暗斑の間隔が広がって目立たなくなり、体系II:300°のSEBsの湾入を形成した白斑の後方では、殆ど暗斑は見られなくなっていた。


最新の観測から

■今年の観測報告(月惑星研究会)

このWebサーバ上の木星セクションに、今シーズンの観測の最新情報をまとめています。

■Pic du Midi天文台:1997年2月19〜20日

ガリレオ衛星の地上支援としてPic du Midi天文台(フランス)が木星画像を公開している。1997年2月19/20日にはガリレオ衛星の第6回目の木星接近(E6)プロジェクトの一環として、画像がS2Pカメラ(近赤外)で撮影された。

この2日間の画像から、木星の展開図を作成した(独自ソフトウェア)。なお、体系IIの経度に合わせて画像を合成しているので、体系Iでは1日で7°ほどずれている。


1997年2月19日〜20日の展開図


1997年2月20日
I= 4 II=35

1997年2月20日
I=105 II=135
・1997年2月19日のオリジナル画像
・1997年2月20日のオリジナル画像
この画像によるとSTrZの白斑は健在であるが、2個に分裂しているかもしれない。第II系で34°に位置し、徐々にGRS(第II系で62°)に近づいている。また、LEBSのBC、DE、FAも確認できる。BCとDEの間にあるWS1も見られるが、DEとFAの間にあったWS2およびWS3は定かではない。

展開図から読み取ったそれぞれの経度を下表にまとめる。

名称位置写真からの経度予測経度(伊賀)予測経度(田部)
STrZ WS(small)center22°

STrZ WSp.e.30°

center34°43°35°
f.e.38°

RS Hollowp.e.60°

GRSp.e.51°

center62°67°61°
f.e.73°

RS Hollowf.e.77°

BCcenter128°122°
WS1center140°136°
DEcenter147°147°
FAcenter173°180°
(伊賀)

参考文献

(1)JUPITER IN 1996: Third interim report.
John H. Rogers, British Astronomical Association,1996 October 23.
INTERNATIONAL JUPITER WATCH NEWSLETTER Nov 11, 1996
http://atmos.nmsu.edu/ijw/

(2)日本語訳:1996年の木星 −第3回報告−
John H. Rogers著、伊賀 祐一訳

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