天文ガイド 惑星の近況 2009年2月号 (No.107)
堀川邦昭
夕暮れの西南天では、木星と金星が並んで輝いています。12月初めは細い月も加 わって、よい観望対象となりました。今後、木星はどんどん太陽に近くなって行 きますが、金星は1月の東方最大離隔に向かって高度を上げて行きます。土星は 12月13日に西矩となり、いよいよ見ごろとなって来ました。

木星

今年、南赤道縞(SEB)南縁に沿って広がっていた青黒いストリークが衰えつつあ ります。22日の永長氏の画像を見ると、大赤斑前方に伸びていた長さ100°超の ストリークのうち、II=90°より前方の部分が消失しており、翌23日の画像では、 大赤斑後方でも南縁の青黒い組織が消えて、SEBが細く見えています。大赤斑は II=130°に位置しており、周囲の暗い取り巻きや、長さが約30°に短縮した前方 のストリークはまだ顕著で、相変わらず赤斑孔の状態が続いていますが、今後、 衰えるのではないかと期待されます。

[図1] 淡化したSEBsのストリークとBA
2008年11月22日 8:39UT I=23.5° II=58.5° 撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm)


SEBの内部ではmid-SEB outbreakの活動が終わってしまい、概ね静かな状況です。 今月はII=280°付近で白雲の湧出活動が見られましたが、規模の大きなものでは ありません。大赤斑後方の攪乱領域(post-GRS disturbance)でも、顕著な白斑は なく、活動レベルの低い状態が続いています。そのため、2007年のSEB攪乱の余 波と考えられる一連の活動は、一段落したと考えられます。SEBが次にどんな活 動パターンに移るのか、注目したいところです。もしかすると、合の間に大きく 様相が変化するかもしれません。

永続白斑BAは11月22日にII=57°と、大赤斑のはるか前方へと進みました。BAの 後方に続いている南温帯縞(STB)の断片はさらに短くなって、BAと同じくらいの 暗斑のようになってしまいました。7月にこの部分が大赤斑の南を通過する際に は、ベルト後端部が小さな暗斑に分解しながら、STB南縁(STBs)のジェットスト リームに乗って後退し、南温帯(STZ)の目玉暗斑に合体吸収されてのが観測され ました。そのためか、目玉暗斑は現在も顕著です。なお、今年明るかった赤道帯 (EZ)は、しだいに暗化しつつあるようで、以前よりも青いフェストゥーン (festoon)が増えてきました。

土星

環の傾きは、12月上旬に-1°を割りました。年末には-0.8°と、この時期の極小 値となります。12月の環は直線状に細くなって、好条件の画像でも、カシニの空 隙を識別することができなくなっています。まさに串団子のような見え方です。 これから1月下旬までは、この状態をキープしますので、今シーズン前半の見ご ろといえるでしょう。

土星本体では、白斑の発生が報告されています。12月7日のダミアンピーチ氏の 観測が最も早いようで、南熱帯(STrZ)に小白斑が捉えられています。10日には阿 久津氏と熊森氏が白斑の検出に成功しており、阿久津氏の測定では、白斑の位置 はIII=311°、南緯43°となっていて、今年前半に観測された長命な白斑と同じ ような場所に出現しています。また、ピーチ氏は同じ日に南赤道縞(SEB)内部に も白斑を捉えています。阿久津氏も13日にSEBの白斑を観測していますが、両者 の経度には隔たりがあるため、同じものではない思われます。

今シーズンも、土星面は活動的なようです。

[図2] 土星の白斑
2008年12月10日 20:53UT I=156.3° III=326.5° 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm)


第32回木星会議

毎年恒例となっている木星会議が、11月29・30日に開催されました。今年は小石 川正弘氏のお世話により、7月に新装オープンしたばかりの仙台市天文台を会場 として、北は北海道旭川から南は四国高松まで23名の木星観測者が集いました。

初日は、開会と自己紹介の後、天文台長の土佐誠氏による天体の磁場に関する講 演で会議の幕が開かれました。普段は木星面の模様を追いかけているため、多く の参加者にとって馴染みの薄い分野でしたが、木星も強い磁場を持っていること もあって関心は高く、多くの質問が寄せられていました。その後、今年の木星面 のまとめに入り、7月に見られた大赤斑と小赤斑(LRS)の会合現象を中心に、活発 な議論が交わされました。昨年は木星面全体で大きな変動が相次ぎましたので、 今年はその余波と見られる現象が多かったようです。夕方からは、新天文台の見 学と国内最大級となる口径1.3mの望遠鏡での木星などの観望を行いましたが、最 新の設備と技術の粋を集めた望遠鏡から、建設にあたられた小石川氏の執念がひ しひしと感じられました。夜は、秋保温泉に場所を移して懇親会が開かれました。 長い木星会議の歴史の中でも、温泉宴会付きは初めてのことで、夜遅くまで話に 花が咲きました。

2日目は研究発表で、下記の4件の発表がありました。 1. 新仙台市天文台と惑星観測(小石川) 2. 木星の帯状流を測る・その1(堀川) 3. シーイングによる惑星像の歪み方の変化(三品) 4. 木星スケッチデジタル化計画のその後(田部) 最後のプログラムは、安達氏を座長とするパネルディスカッションで、「これか らの惑星観測」をテーマに活発な議論が繰り広げられました。

次回の木星会議は来年9月頃に東京で開かれます。来年は月惑星研究会が創立50 周年を迎えるため、記念行事と合わせて盛大に行われる予定です。

[図3] 仙台市天文台の1.3m望遠鏡と木星会議参加者


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