天文ガイド 惑星の近況 2009年6月号 (No.111)
堀川邦昭

3月8日に衝を迎えたばかりの土星はしし座を逆行中です。周囲に明るい惑星がな いため、夜半前の空では格好の観望対象となっています。一方、明け方の木星は なかなか高度が上がらないため、観測条件はまだまだです。なお、金星は3月27 日に内合となり、明け方の東天へと移りました。

ここでは3月後半から4月前半にかけての惑星面についてまとめます。なお、この 記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。

土星

注目されている赤道帯(EZ)北部の小白斑は、当観測期間も多くの観測者によって 捉えられています。経度測定の結果は、3月17日の柚木氏(大阪府)の画像でI= 154.5°、4月2日のMedugno氏(イタリア)の画像ではI=172.9°となっていますの で、相変わらず1日当たり+1°というスピードで後退を続けています。輝度があ るため、それほど解像度の高くない画像でも認めることができますが、4月10日 はどの観測者の画像でも白斑を認めることができませんでした。急に衰えてしま ったのか、それとも一時的なものなのか、確認が待たれるところです。なお、白 斑の緯度は+8°なので、環が開くと観測に不利ですが、先月も書いたように、環 の影がB環の内側に移動したため、今のところ問題ありません。しかし、5月に環 の傾きが最大になると、A環が白斑の一部を覆うようになると予想されます。

南熱帯(STrZ)北部では、柚木氏が3月30日の画像でIII=346.6°に白斑を捉えてい ます。この白斑は、先月のこの記事でGo氏(フィリピン)が観測したものと同じ白 斑と思われ、昨年から続いているこの領域の一連の活動によるものと推測されま す。なお、EZ南部にあるIII系での運動が疑われている暗斑は、今月も数名の観 測者が捉えていますが、追跡するには至りませんでした。

タイタンの影が土星面を経過する現象が、3月28日と4月13日に見られました。タ イタン自身はすでに土星の北側を通り過ぎるようになっていますので、本体の経 過現象は見られませんが、影はまだしばらくの間、本体に残るようです。他にも ディオーネ、エンケラダス、テティス、レアといった微小な衛星の土星面経過が 捉えられています。これらは、主に観測条件に恵まれている海外の観測者による ものですが、国内では3月17日に柚木氏がレアとその影、4月9日に熊森氏 (大阪府)がディオーネの影の経過の撮像に成功しています。

[図1] ディオーネとその影の土星面経過
2009年4月9日 11:58UT I=6.9° III=128.7° 撮像:熊森照明氏(大阪府、20cm)


木星

観測数が増えるにつれて、木星面の詳しい状況がわかるようになってきました。 ただ、国内の観測条件はまだまだなので、多くは海外の観測者に頼らなければな りません。

今シーズンの木星面で目につくのは南赤道縞(SEB)の変化で、全周で二条に分離 し、間には明るく幅広い明帯(SEBZ)が発達しています。昨年の見られたmid-SEB outbreakによる乱れた白雲領域とは異なり、SEBZは静かなゾーンで、微細構造が 少なく明暗もほとんどありません。特に大赤斑前方では幅広く単調で、SEB南縁 には凹凸がほとんどなく平坦です。大赤斑後方は、やや乱れて白斑などが散見さ れますが、激しい活動ではないようです。このようなベルトの様相は、2000年頃 とよく似ています。

大赤斑は、やや淡く赤みも弱いものの明瞭です。経度はII=133.1°(4月15日)で、 昨シーズン末とほとんど変化ありません。永続白斑BAは4月2日でII=357.1°にあ ります。後方に続く南温帯縞(STB)の断片は縮小して、小さな暗斑のようになっ てしまいました。昨年顕著だった南温帯(STZ)の大型リング暗斑が、BAに約20° まで接近しています。6月か7月にはBAにかなり接近することが予想され、ひょっ とすると衝突・合体するかもしれません。昨年の大赤斑と小赤斑(LRS)の会合の ように、注目されることでしょう。STBでは、他にII=245.7°(4月11日)にある横 長の暗斑が目に留まります。これは昨シーズン、大赤斑の前方に見られた孤立し た小暗斑が発達したもののようです。また、大赤斑の南から前方にかけては、 STB remnantと呼ばれる青いフィラメント状の模様が見られます。

STBの南側の南南温帯縞(SSTB)は、大赤斑の後方で大きく二条に分離しています。 北側の組織は全周で明瞭ですが、南側の組織はII=250°付近で途切れています。 昨年、A0からA8まであった高気圧性の小白斑は、8個が確認されており、A7だけ が行方不明です。

北赤道縞(NEB)は今年も活動的なようで、リフト領域が出現しています。今回の 活動は3月末に始まったようで、28日のSalway氏(オーストラリア)の画像でII= 330°付近に初期の白雲が見られます。4月11日にはかなり発達し、II=280°付近 に長さ30°ほどの傾いた明部が形成されています。ベルトの北縁にはバージ (berge)による凹凸がいくつか見られます。長命な白斑WSZはII=207.4°(4月8日) に位置していますが、明るい北熱帯(NTrZ)に埋もれてわかりにくくなっています。

北温帯縞(NTB)は、今年も二条に分離し、南組織(NTBs)は赤みが強く直線的です。 一方、ベルト北部では青黒い不規則な暗部が増え、暗斑の連鎖のような北組織 (NTBn)を形成しています。特にII=290〜20°では、NTBnが湾曲して北へ張り出し、 北温帯(NTZ)が薄暗くなっています。この両端部分は凹面状にくぼんで、南熱帯 攪乱(STrD)とよく似た形になっていて注目されます。

[図2] 今シーズンの木星
左) 2009年4月2日 20:53UT I:247.9° II:359.5° 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) 右) 2009年4月15日 20:50UT I:137.5° II:150.0°撮像:Christopher Go氏(フィリピン、28cm)


金星

まず、図3をご覧ください。内合からわずか7時間後の金星です。太陽との離隔は わずか8°、少しでも導入を誤ると視野に太陽が入ってしまう、危険な観測です。 この日は柚木氏だけでなく、米山氏(横浜市)も撮像に成功しており、観測者の執 念が感じられます。

この後、金星は明け方の空に移り、急速に高度を上げるとともに、太って行きま す。5月2日に最大光輝、6月6日に西方最大離隔となって、観望しやすくなります が、しばらくの間は、日中に探した方がよいでしょう。

[図3] 内合を迎えた金星
2009年3月28日 02:45UT 撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm)


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