天文ガイド 惑星の近況 2011年10月号 (No.139)
堀川邦昭

7月後半は台風の影響で悪天続きでしたが、8月に入って夏空が戻ってきました。 夏場は日中暖められた地表が冷めて大気が安定する夜半過ぎが、惑星観測に適し た時間帯となります。

木星は7月27日に西矩を過ぎて、夜半頃、東の空に昇るようになりましたので、 好シーイングに恵まれて、高解像度の画像が数多く報告されています。一方、観 測時間帯が宵の内となる土星は気流が安定せず、観測条件は悪くなりつつありま す。

ここでは7月後半から8月前半にかけての惑星面についてまとめます。この記事中 の日時は、すべて世界時(UT)となっています。

木星

大赤斑(GRS)後方の南赤道縞(SEB)に見られる白雲領域(post-GRS disturbance)は、 当観測期間中も活動的でした。7月中旬は整然と並んだ白斑群が見られましたが、 8月には乱れた白雲へと変化しています。6月に形成された時、活動域の長さは 80°もあったのですが、以後縮小を続けて7月末には40°と、約半分になってし まいました。ところが、8月初めに新しい白斑がII=230°付近に出現し、活動域 は再び長くなっています。このような、活動域の縮小と再生は、post-GRS disturbanceの特徴のひとつです。不思議なことに、メタンバンドの画像を見る と、post-GRS disturbanceの領域は、明るくほとんど写りません。これは、この 領域の雲が対流活動によって、通常のベルトよりも高いところに吹き上げられて wいることを示しているのかもしれません。活動域の後方では、極めて濃く太い SEB北組織(SEBn)がII=0°付近まで続いています。

大赤斑は相変わらず周囲を暗く縁取られた赤斑孔(RS Hollow)となっています。 以前と比べると北側の縁取りが淡化して、大赤斑とSEBを隔てる白いチャネルが 復活していますが、南側のアーチは健在です。経度はII=169°(12日)で、昨シー ズンの末からあまり変化していません。過去数年間続いていた、ひと月に1°以 上という後退運動は止まったようです。大赤斑前方のSTrZ北部を著しく暗化させ ているストリーク(dark streak)は、現在もII=260°付近まで続いており、木星 面の4分の3を覆っています。5月に発達した盛り上がった暗部は完全に消失して しまいました。

南温帯縞(STB)以南では、特に大きな変化は見られません。永続白斑BAはII=340° 付近にあり、暗い縁取りに囲まれた明瞭な白斑です。STBは大部分の経度で淡化 しており、南半球の中〜高緯度では南南温帯縞(SSTB)が唯一目立っています。 SSTBには今年も高気圧性の小白斑(AWO)が全周で8個ほど観測されています。

北赤道縞(NEB)では、北縁に凹凸を作っているバージ(barge)と呼ばれる赤茶色を した横長の暗斑が目を引きます。濃く目立つものが全周で4〜5個存在しますが、 特に大赤斑の北側に見られるバージが顕著で、木星面で最も濃い模様として見ら れることもしばしばです。このバージは元々近接した大小2個のバージでしたが、 7月20日過ぎに合体して東西に長いひとつのバージになってしまいました。この ようなバージ同士の合体現象は、これまでにもしばしば観測されています。すぐ 隣の北熱帯(NTrZ)には大型の白斑があり、NEB北縁に浅い湾(bay)を作っています。 本体は明るいNTrZの中にあるため、わかりにくいのですが、輝度のあるものが4 個程度あり、このうち長命なWSZと呼ばれる白斑はII=20°付近に見られます。

北温帯縞(NTB)南部は全周で淡化し、青みのある淡い条が痕跡として残っていま す。この緯度を流れる木星面最速のジェットストリームによるアウトブレーク現 象(NTBs jetstream outbreak)の発生が期待されています。この現象は、メタン バンドで特に明るく写る小白斑の出現から始まるので、観測の際には注意が必要 です。北半球の中〜高緯度で明瞭に見られるベルトは北北温帯縞(NNTB)で、濃淡 や凹凸はあるものの概ね連続したベルトとなっています。このほか、II=300〜 110°の範囲ではNTB北組織(NTBn)が薄暗く見えており、特にII=0〜60°ではNNTB と同程度の濃さがあります。この濃化部の後方の北温帯(NTZ)は薄暗く、やや乱 れていて、昨シーズン観測された攪乱領域の名残と思われます。

[図1] 8月前半の木星面
最新の木星画像を体系IIで約60°間隔に並べた。
撮像:(左上から順に)阿久津富夫氏(35cm、フィリピン)、長谷部孝男氏(28cm、愛知県)、吉田知之氏(30cm、栃木県)、山崎明宏氏(32cm、東京都)、熊森照明氏(28cm、大阪府)、小澤徳仁郎氏(30cm、東京都)
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[図2] メタンバンドによる木星面
大赤斑後方のSEBはメタンでは明るく、ほとんど見えない。
撮像:菅野清一氏(30cm、山形県)


土星

この記事の冒頭で書いたように、土星の観測条件は悪化の一途をたどっています。 そのため、観測数は激減して解像度の高い画像は皆無となってしまいました。北 熱帯(NTrZ)で続く白雲活動の詳細は追跡できなくなっていますが、二本の明帯は 現在でも明瞭に見えていて、間の暗条もはっきりしています。白雲活動は徐々に 拡散しつつも、今後長期間に渡って残ると思われます。

太陽との合は10月半ばで、まだ2ヵ月ありますが、日没時の高度はすでに30°を 切っていますので、観測は困難になるでしょう。今シーズンの土星のレポートは、 これが最後になるかもしれません。

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