天文ガイド 惑星の近況 2020年7月号 (No.244)

堀川邦昭、安達誠


木星は20日に、土星は26日に相次いで西矩を迎えました。 火星も少しずつ近づいています。 春たけなわとなり、シーイングも改善し、惑星面の詳細な状況がわかるようになってきました。

ここでは5月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

木星面では北赤道縞(NEB)の拡幅活動が始まり、注目されています。 先々月号でNEBが細くなるかもしれないと書きましたが、逆になってしまいました。 ベルト内部の白雲活動(リフト)に伴って、3月下旬からII=180°付近でベルトが北へ広がり始め、前方に広がって行きました。 現在、NEBはII=60〜180°の範囲で、北縁が北緯21°まで広がり、ベルトが幅広く見え、ベルト内部には拡幅時特有の大きな明部が発達しています。 拡幅域はII=130°にある白斑によって前後に分断されています。 この白斑は昨シーズン観測されたWSbに当たります。 もうひとつあったWSaという白斑は、拡幅活動によって衰退・消失したようです。 NEBの拡幅は3〜5年間隔で起こります。 前回は2017年でした。 新たな拡幅が発生したと思われますが、一時的・局所的な活動に留まる可能性もありますので、今後の進展に注目しましょう。

永続白斑BAはII=45°に位置しています。 暗い縁取りのあるリング白斑で、内部は明るく赤みはありません。 1日当たり-0.45°の割合で前進していますが、3月下旬から少し加速気味です。 そのため後方に伸びる南温帯縞(STB)の断片は、少し長く見えるようになりました。 また、今シーズンは大赤斑(GRS)との間にSTB北組織(STBn)に沿って乱れた暗斑群が見られましたが、4月半ばに急速に衰え、現在はほとんど残っていません。 これらの変化は、BA後方のSTBの断片が圧縮されることでSTBnの暗斑群が生成されるという、これまでの知見とよく整合しています。

[図3] 5月の木星面全周展開図
5月4日〜6日の6画像から作成。NEBの拡幅領域が図の右側、II=60〜180°に見られる。NEBには大きなリフト領域も発達して活動的。大赤斑は周囲に暗部があるものの、濃いオレンジ色で大変目立つ。永続白斑BAとの間のSTBnジェット暗斑群は消失した。

火星

火星の高度はまだ30°くらいですが、視直径は7秒を超え、模様が見やすくなってきました。

オーストラリアのナイル・マクニール(Niall MacNeill)氏が、4月11日にメリディアニの西側にダストストームを記録しました。 すでに南北30°くらいに広がっていましたので、おそらく1〜2日前に発生したものと思われます。 また、そのすぐ東でスポット状のダストストームが見つかりました。 これらは独立したダストストームではなく、後者は前者から波及したものと思われます。

その後、ダストストームは衰え、4月13日には付近一帯を覆うダストベールになりました。 その結果、ヘラスからMarigaritiferniにかけての広い地域が見えにくくなりました。

南極冠はよく目立ち、ダークフリンジも見えるようになりました。 また、極冠の中心部は暗くなっていて、そろそろ割れ目として見える日も近づいてきました。

南極冠がとけ始め、ヘラスに霧か白雲が拡がるようになってきました。 これからは白雲が広がり、ヘラスの形がはっきりしてくるものと思われます。 どこからどのように広がるか注目したいので、撮像は南極冠に露出を合わせて撮ることを心掛けてください。

[図1] メリディアニ西側のダストストーム
白線の先に淡く広がっているのがダストストーム。撮像:ナイル・マクニール氏(オーストラリア、35cm)
[図2] 明るくなってきたヘラス
ヘラスの丸い形がようやくわかるようになってきた。青画像では淡く白雲が見られる。撮像:井上修氏(大阪府、28cm)

土星

土星では高緯度に白斑が出現して注目されています。 4月6日、南アフリカのクライド・フォスター(Clyde Foster)氏は、北極の六角形模様のすぐ外側にあたる北緯76°、III=231.5°に白斑を捉えました。 その後、白斑は1日当たり+4°で後退して行きましたが、4月末に突然動きが変わって、1日に-5°前後のスピードで前進するようになり、5月5日にはIII=252.3°に位置しています。 また、形もしだいに東西に伸びて、細長い明帯に変化しています。

北半球高緯度での白斑の発生は2018年3月以来、2年ぶりです。 前回は2白斑が2個出現し、活動は1年近くに及びました。 今回はどのような活動を見せるか注目しましょう。

[図4] 北極域に出現した白斑
六角形模様のすぐそばに白斑があり(▼)、前方に白いすじが流れ出ている。画像は強調処理されている。撮像:クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm)

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