天文ガイド 惑星の近況 2021年2月号 (No.251)

堀川邦昭、安達誠


夜空では接近中の火星がオレンジ色に輝いています。 早いもので、11月15日にうお座で留となり、順行に転じました。 夕暮れの南西天では、木星と土星が20年ぶりの会合を迎えています。 すでにファインダーで同視野に入っていますが、今後も接近を続けて、12月21日には角距離6分まで近づきます。

ここでは12月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

ダストストームが発生しました。 11月11日、Chryseの北部に小さな光斑が出現し、翌12日にはChryse南部にV字形のダストストームとして、目立つようになりました(図1)。 11月28日現在、西経0°を中心に火星面の半分ほどを覆っています。 ただし、次第に弱くなる傾向が見えています。

発生後、数日して見覚えのあるのあるダストストームだと思い、遡って調べてみると、2005年のダストストームと時期が重なることがわかりました。 発生日の2005年10月17日はLs=308°で、2020年11月11日はLs=313°とほぼ同じでした。 その上、発生場所は同じChryse北部というだけでなく、その後の経過まで酷似していました。

図3に発生後の経過を示しました。 2005年、2020年とも同じコースをたどっています。 発生当初は、南から西に進むコースを通りました(実線のコース)。 その後数日して再発生し、今度は東(破線のコース)に進みます。 火星の半分程度広がったところで拡散し、衰退しています。

2005年は発生前の10月13日に、同じ発生地点で小さなダストストームが起きていて、これも今回と同じでした。 季節が同じだと、風の様子も似ているので、同じようなダストストームが起こってもいいわけです。 日本に来る台風が同じようなコースを通るのと同じです。

ダストストームは、発生してしばらくの間、地表付近を進むので、進路は地形に大きく左右されます。 今回は通り道に、有名なValles Marineris(火星渓谷)がありました。 今回や2005年だけでなく、2018年のグローバルダストストームでも、ダストはこの大きな谷に入り込みました。 そのため、地形図と同じ谷の形がくっきり現れ、画像だけでなく、眼視でも見ることができました(図2)。

南極冠は非常に小さくなりました。 12月1日現在、経度0°方向から見ると、非常に小さい輝くような光点として見えますが、180°方向から見ると、冬のシーイングでは見えなくなっています。 南極冠が真の南極から偏心しているためです。 このため、南北の向きが分かりにくくなることでしょう。

今後は火星の中心緯度(De またはφ)が+に傾いてきます。 北極冠ができる時期と重なり、北極フードがよく見えるようになります。 これからは、それを参考にするとよいでしょう。

[図1] 発生直後のダストストーム
矢印の先にある少し明るいところがダストストーム。2005年も同じ位置で発生した。撮像:熊森照明氏(大阪府、35p)
[図2] 火星渓谷を埋めるダストストーム
中央下に平行に伸びる明るい2本のラインがValles Marineris。撮像:鶴見敏久氏(岡山県、35cm)
[図3] ダストストームの分布と進路
第一波(実線)は南に進んでから西へと広がった。第二波(破線)は東に向かって進んだ。2005年、2020年ともほとんど同じコースであった。

木星

8月に始まったNTBs jetstream outbreakが終息し、北温帯縞(NTB)は全周で濃化復活しました。 木星面は落ち着いた状態に戻っています。 大赤斑(GRS)は相変わらず鮮やかなオレンジ色で、目立つフレーク活動は見られません。 経度はII=346°で10月から停滞しています。

大赤斑前方のII=294°には永続白斑BAがあります。 大きく明るい白斑で、大赤斑との間には南温帯縞(STB)の断片が伸びています。 BAは2月から加速状態を続けていましたが、10月以降は元のドリフト(1日当たり-0.5°)に戻ったようです。 それに伴って、BA前方のSTB北組織(STBn)に沿って、再びジェットストリーム暗斑が散見されるようになりました。

南側の南南温帯縞(SSTB)には、7個の高気圧的白斑(AWO)が存在します。 そのうちA1〜A5までの5個が90°の範囲に集まっていて、先頭のA1がもうすぐBAの南に差し掛かります。 密集したSSTBのAWOがBAを通過すると、AWO同士の合体が起こることがあるので、注意が必要です。

大赤斑前方の南赤道縞(SEB)には、ホワイト・バージ(white barge)と呼ばれる東西に長い明るい領域があります。 後端は赤斑湾(RS Bay)に接している一方、前端は拡散してさらに長くなっています。 また、II=100°台ではSEBの中央組織が淡化して、ベルト内が明るくなっています。

NTBs jetstream outbreakにより大きく乱れた北赤道縞(NEB)北縁は、落ち着きを取り戻してきました。 ベルト北部では、新しくバージ(barge)や小白斑の一群が形成され始めているようです。 長命な白斑WSZは、II=180°付近に灰色の斑点として見られ、復活の途上にあるようです。 もうひとつのWSbは現在でも存否不明の状態が続いてます。

[図4] 永続白斑BAとその周辺
中央上にBAが、右端に大赤斑が見える。BAの南にSSTBのAWOが迫っている。SEB中にはホワイト・バージが東西に長く伸びる。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)

前号へ INDEXへ 次号へ