木星は10月9日に留となって逆行に転じ、観測の好機に入りました。 火星も22日にふたご座で西矩を迎え、視直径は8"と大きくなってきました。 土星はみずがめ座を逆行中で、夜半前の空に見えています。
ここでは10月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
注目される赤道帯南部(EZs)の攪乱領域(SED)は、後端部の南赤道縞(SEB)北縁のリフトが、10月10日頃に大赤斑(GRS)の北を通過しました。 7月以来3回目ですが、今回も大きな変化は見られません。 SED後端はI=30°にあり、EZsに伸びるフェストゥーン(festoon)と前方の乱れた明部が目立ちます。 また、I=240〜300°の区間も活動的で、さらに前方のSEB北縁の細かい突起も含めると、SEDはほとんどの経度に及んでいます。
9月末から10月前半にかけて、SEB南縁を後退する3個の大型リングが次々に大赤斑と会合しました。 これにより、大赤斑の周囲には再びストリーク(暗条)などの模様が出現しています。 また、大赤斑では軽微なフレークが発生したことが、宮崎勲氏(沖縄県)によって指摘されています。 大赤斑後方のSEBは大きな白斑が2個出現し、再び活動的になる兆候が見られます。
北赤道縞(NEB)では、先月初めにWSCとWSEの合体(合体後の白斑はWSEと呼びます)がありましたが、そのWSEにさらに別の白斑が合体する現象が進行中です。 新しい白斑はWSE合体後の9月上旬に、前方にあったNEBのリフト領域後端付近で形成されました。 10月半ばから急速に接近し、WSEに南側から巻き付くように回っています。 27日時点では、WSEの周りに蚊取り線香のような白雲の渦巻きができていて、合体はまだ進行中です。
NEB北縁の白斑は現在7個あり、他にも微小な白斑が見られます。 また、NEB中央寄りにはバージの卵のような暗斑も形成されています。 NEBは拡幅が完了し、次のステージに向かっているようです。
永続白斑はII=200°にあり、相変わらずコントラストが低く不明瞭です。 前方の南温帯縞(STB)は暗斑の集合体のような様相で、大赤斑との間には大量のジェットストリーム暗斑群が見られます。
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[図1] 大赤斑北を通過したSED後端部 |
中央左に見える白斑とフェストゥーンがSED後端部。前方のEZsも活動的。右上にガニメデが見える。撮像:石橋力氏(神奈川県、30cm) |
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[図2] NEB北部の白斑同士の合体 |
▲で示した2白斑のうち、右が9月に合体したWSEで、左は新しい白斑。右端の白点はイオ。右側の図は合体する様子で、白雲が時計回りにWSEに巻きついていくのがわかる。撮像(左):眞島清人氏(沖縄県、30cm) |
火星の中央緯度は、このひと月の間に5°増して北緯12°になりました。 北極が見やすくなりましたが、極冠はまだ北極フード(雲)の合間から時々見えるだけです。
近日点を過ぎましたが、ダストストームの活動はまだ続いています。 9月18日にChryseとTharsisの2か所で発生したダストストームは、合体して西に広がり、21日には西経140°付近に達したと思われます。 その後観測が途絶えて、活動は断片的にしかつかめなかったのですが、このダストストームは火星の半球近くに広がったようです。
一連のダストストームの活動で、西経70°を中心とする半球は、濃いダストベールに覆われ、暗色模様が見えにくい状態になっています。 眼視では模様が淡くて正確な形がとらえにくい一方、画像ではコントラストをつけ過ぎて、ダストの様子が分かりにくいものが多くありました。
10月13日、ElysiumとSyrtis Majorとの間に、経度方向の長さが50°にもなる帯状の特殊なダストストームが突然発生しました(図1)。 翌14日には南に動いて、西半分は淡くなったのですが、北側に新たな帯状のダストストーム(第2波)が発生して、同心円状に見えていました。
15日になると、ダストストームはすっかり見えなくなって、普段通りの姿に戻ってしまいました。 これだけ目立つ形状のダストストームが1日でできるというのは不思議なことです。 残念なことに、このダストストームは日本では見ることができませんでした。
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[図3] 帯状に伸びるダストストーム |
Syrtisの左にループ状に伸びているのがダストストーム。赤画像。撮像:マイク・フッド氏(米国、35cm) |
8月後半に出現したB環のスポークは、10月も観測されています。 1日の熊森照明氏(大阪府)の動画では、30分の間にスポークが環の公転によって移動していく様子が鮮明に捉えられています。 また、10月前半のいくつかの画像では、B環上にスポークと思われる東西で非対称な陰影が見られます。
環はかなり開いて傾きが5°と極大近くになりました。 一方、太陽に対する傾きは減少して、3°しかありません。 そのため、本体と比べると環がかなり暗くなっています。 4月頃と比べると、太陽に対する傾きは半分程度で、明るさの違いは一目瞭然です。
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[図4] 暗くなった土星の環 |
4月と10月を比較すると、環が著しく暗くなっているのがわかる。B'は太陽に対する環の傾き。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm)、伊藤了史氏(愛知県、30cm) |
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