天文ガイド 惑星の近況 2025年2月号 (No.299)

堀川邦昭、安達誠


木星はおうし座を逆行中で、衝が間近になりました。 火星はかに座に入りました。 視直径は10″を越え、急に大きくなってきました。 土星は16日にみずがめ座で留となり、順行に戻りました。

ここでは11月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

濃化したSEB内部の攪乱現象であるmid-SEB outbreakが発生しました。 2016年12月末以来、8年ぶりとなります。 発生は11月11日で、II=328°の南赤道縞(SEB)内に明るい小白斑が出現、翌日にはメタンバンドでも明るく捉えられ、mid-SEB outbreakであることが確実になりました。 国内では発生当日の鈴木邦彦氏(神奈川県)の報告が最も早い観測でした。

白斑の発生場所は、昨シーズンから存続する拡散した明部の前端付近にあたります。 SEBで見られる動きの遅いバージ(茶色い暗斑)や拡散した明部は、攪乱活動の発生源になることがしばしばあり、前回のmid-SEB outbreakや2010年のSEB攪乱がそうでした。

白斑は数日のうちに前方へ拡散してしまいますが、発生源から次の白斑が供給され、前方北−後方南には細い明帯が伸びています。 11月27日の時点で見られる白斑は3番目のもので、周囲の乱れ方も小さく、活動は穏やかな印象を受けます。 しかし、前回のoutbreakも最初は穏やかでしたが、その後活発になり、半年以上に渡って木星面の約半周に広がる最大級の活動に発展したので、油断なく観測を続ける必要があります。

赤道帯南部(EZs)の攪乱領域(SED)は、EZsのほぼ全周に広がっています。 「本陣」と呼ばれる後端部はI=60°にあり、大きな明部とフェストゥーン(festoon)が目立ち、後方のSEB北部に長い明帯を引いています。 11月中頃には、本陣にあるSEB北縁のリフトが口を開け、一時的に明部が明るさを増し、festoonも濃くなりました。 本陣から前方、I=300°付近までの区間は、コントラストのある大きな明暗模様が見られ活動的です。 その前方ではSEB北縁の突起が多く、模様の規模は小さくなります。 12月には本陣が再び大赤斑の北側を通過するので、何らかの変化が期待されます。

[図1] mid-SEB outbreakの発生
mid-SEB outbreakが発達する様子と最新の木星面。まだ大きく乱れていないが、今後激しくなる可能性がある。撮像:下) 阿久津富夫氏(フィリピン、45cm)
[図2] 大赤斑周辺の状況
大赤斑は周囲に暗色模様がなく明瞭。右側に経過中イオの本体と影が見える。撮像:森田光治氏(滋賀県、15cm)

火星

火星は北半球の春分であるLs=0°を過ぎて、遠日点が近くなってきました。 この時期はダストストームの活動が少なくなります。 11月は新たな発生はありませんでした。 その代わり、火星面では雲が見られるようになりました。

北極冠はほとんどの経度で北極フード(NPH)に覆われており、クリアな姿はまだですが、フードの下にはっきりした形が見えてきました(図3)。 この様子は眼視でも見ることができます。 これからは、急速に北極フードが消えて、大きな北極冠を見るチャンスとなります。

その後、北極冠の縮小が始まると、周囲にはダストストームが起きたり、雲が出たりします。 また、低緯度地方に、幅の広い白雲のバンドが見えてきます。 赤道帯霧と呼ばれ、例年Ls=0°付近から淡く見えてくるのですが、近年は撮影技術の進歩によって早くなる傾向にあり、過去の記録と合わなくなっています。 しかし、今シーズンは画像を見る限り、いつもの時期に見え始めたようです。 活動が盛んになると、細い筋状に見え、高層の大気の状態を見せてくれます。

この赤道帯霧はTharsis(80〜120W, +10)付近に最も早く姿を見せます。 10月初めにかすかに見え、Ls=0°を越えて11月入ると見やすくなりました。 赤道帯霧は青(B)画像でよく記録され、正確な姿を記録するには、他の波長の光が漏れないフィルターワークが不可欠です。 最近はこのフィルターの組み合わせを実行する国内の観測者が増えているので、今シーズンの活躍が期待されます。

遠日点付近は、火星の高緯度のリムに、突出した雲の見えることがあります。 観測するときは、リムの姿にも注意してください。

[図3] 北極冠の様子
下の明るい部分が北極冠。NPHに覆われて明るさが鈍くなっている。撮像:井上修氏(大阪府、28cm)

土星

土星の環の傾きは、11月半ばに5.2°となり、今シーズンの極大となりました。 今後は来年3月の環の消失に向かって、急速に傾きが減少して行きます。

11月初めまでは、スポークを思わせる東西で陰影が非対称になっている画像が見られましたが、その後は観測条件の悪化により、よくわからなくなっています。

土星本体は穏やかな状況にあり、特筆すべき模様は認められません。

[図4] 11月の土星
環の傾きが極大になり、かなり開いて見える。本体は穏やかな状況にある。撮像:ティジャーノ・オリベッティー氏(タイ、50cm)

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