天文ガイド 惑星サロン2007年1月号 (No.52)安達 誠

2005年マリネリス渓谷と黄雲

2005年10月に発生した黄雲は、V字型になった面白い姿を示しました。発生後の変化が楽しみでしたが、意外な展開になりました。10月18日に発生し、19日にはマリネリス渓谷にすっぽり入り込んだのです。 この現象は、日本では観測できず、ヨーロッパからアメリカが観測には絶好の条件となりました。日本の観測者は首を長くして見える日を待ちました。その間、面白い姿が見られました。画像6はJim Phillips氏の撮影された画像です。中央付近に明るいベルトのあるのがわかります。

この姿を、地表の展開図と比較して見ましょう。面白いほどぴったりと当てはまることがわかります。マリネリス渓谷は東西方向に延びた火星最大の渓谷で、非常に大きな姿をしています。渓谷の南北の壁にはたくさんの樹状の谷ができています。これらのたくさんの谷を作ったものは、風か地中の水分の蒸発かはっきりしていません。しかし、いずれにせよ深い谷が出来上がりました。

今回の黄雲は、その中にすっぽりとはまりこんだわけです。小さな地形も非常によく一致していました。ダストストームの進入した後の姿は、まだ探査機の画像からは見つけていません。侵入前と侵入後の姿がわかると面白いことでしょう。

火星の黄雲は、時によって面白い姿を見せてくれます。肉眼では見えにくいのですが、画像だと良くわかります。最近はその姿を簡単に撮像できるようになりました。また、位置測定などの解析ソフトもできています。火星の観測も新しい時代に入りました。

画像6 マリネリス渓谷に侵入した黄雲

撮影/ Jim Phillips(米国)、2005/10/19 07:11(UT)、20cm屈折

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