天文ガイド 惑星サロン
2022年4月号 (No.235)
鈴木邦彦

薄明中の謎の赤かぶりの原因

1月の木星撮像は夕方の薄明中が主でした。 私のシステムでは、なぜか薄明中の画像中央部に赤の色かぶりが発生し、そこに木星像が重なるとレベル補正してもカラーバランスに妙なムラを生じます。 漠然と拡大光学系とフィルタとの相性の問題かと思っていましたが、ある晩の夢の中で「赤色の被り・・赤?・・赤!」とハっと気づきました。 そう、赤といえばZWO社製カメラのボディカラーです。

簡単に分解できるカメラなので、撮像素子側から迷光を探してみると、悪さをしていたのはカメラの開口部の斜めの切削加工面で反射した光が、すぐ対物側に置かれたUV/IRカットフィルタで再反射して撮像素子の中央部に集光していたのでした(図1)。 入射角の大きい再反射では薄膜での反射防止効果が小さく、強い迷光でした。 撮像素子側にフィルタを置けば問題は発生しないのでしょうが、手持ちのフィルタでは対物側に設置せざるを得ませんでした。

原因が分かったので、カッターで切りぬいた、開口部より小さな内径のドーナツ形の黒の厚紙を装着したらあっさり解決してしまいました。 夜間の撮影では、惑星本体の光だけが撮像素子に届くので気にならなかったのですが、これで月面や昼間の撮影も楽しめそうです。 ZWO社のカメラは高性能で経済的ですが、素の赤のアルマイト処理の開口部だけは、保険として簡単な黒マスク処理されることをお薦めします。

[図1] ZWO社製カメラと赤カブリの原因

[図2] 黒マスクによる対策

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