最初にシューメーカー・レビー第9彗星(SL9)の情報を聞いたとき、衝突痕が残るとは考えませんでした。 むしろ衝突時のきのこ雲が木星の縁に顔を出すのではと考え、7月17日のC核の衝突を狙いました。 衝突は午後4時頃、真昼間です。 クラゲのように青空に浮かぶ木星に眼を凝らしたのですが、何も見えませんでした。
その後は雲が湧いて、翌日は雨でした。 普及し始めたばかりのインターネットでは、衝突痕が見えるという情報が飛び交っています。 これには焦りました。 世界中で雨が降っているのはここだけ?と感じたものです。
19日になってようやく晴れ、初めて見たのが小さなE核痕とA核痕、その後、22時頃にK核痕が姿を現し、巨大な衝突痕に度肝を抜かれました。 まるで木星に穴が開いて、向こう側が見えているようでした。
それ以降、毎日仕事を早く切り上げ、近所の盆踊りの歌を聴きながら必死に衝突痕を追いました。 翌年、同じ歌を聴いたら、衝突痕が眼に浮かんできたほどです。 帰宅前にエアコンで望遠鏡を冷やしておくという筒内気流対策も大当たりでした。
当時、衝突現象は1000年に一度と言われました。 30代半ばの、観測者として一番よい時期にこのような現象を目撃できて、幸運だったと感じます。 自分の観測が新聞や雑誌に取り上げられたのは、よい記念になりました。
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[図1] 初めて見たK核痕のスケッチ |
コメント欄に!マークが5つ並んでいて、当時の衝撃を思い出します。 |
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