5月には視直径も15秒を越え、小口径の望遠鏡でも表面の模様が見えるようになりました。6月の最接近にむかって、次第に大きさをましていく様子がとらえられ、観測にも力が入るようになりました(写真1)。写真2は、5月に池村俊彦氏(名古屋市)が撮影された5組の画像から作成した展開図です。
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写真1 5月の火星観測 |
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観測/MA:安達誠氏(30cm反射)、AK:風本明氏(20cm反射) TN:西谷輝昭氏(21cm反射)、NI:伊藤紀幸氏(60cmカセグレイン)
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今回の観測ではサバ人の湾のすぐ南側にあるパンドラー海峡が非常に淡くなり、間にあるデューカリオン地方が非常に広がっていることがわかりました。また、エリシウムという高地が北半球にありますが、この高地の東側にあるカロンの三叉路と呼ばれているところが前回の接近に引き続き、濃くなっていることもとらえられました。
観測は、南極冠にも注意が必要になってきました。地球に対する火星面の傾きはほとんどなく、中心付近に赤道が見える状態でしたが、5月の初めは南極地方に白いフードがかかっており、極冠の姿をはっきりととらえることはできませんでした。フードの下に南極冠のエッジを認めることはありましたが、鮮明な南極冠は5月の間には見ることはできませんでした。いつになったら、フードのない鮮明な南極冠が見られるか、これからの観測が大切になります。なお、5月の末にはフードは次第に晴れ、南極冠のエッジと思われるものが見られるようになりました。
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写真2 2001年5月の火星展開図 |
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撮影/池村俊彦氏(31cmニュートン、NEC PICONA)、展開図作成/伊賀祐一
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4月頃からブルークリアリング現象が起こっていましたが、5月に入るとますますその傾向が強くなり、青色光で撮影した画像には、普段なら写らない火星の表面の模様が撮影できるようになりました。新川勝仁氏(堺市)が撮影した写真3の4月13日の画像(下段)は、左が赤色光で撮影したもので肉眼で観測したときの模様ですが、右の青い青色光での画像では模様の形が一致していません。じつはこれが普段の青色光で見た様子です。青色光では火星大気の水蒸気のために表面の模様が写らないのです。ところが5月19日(上段)の青色光の画像では表面の模様とほとんど同じものが見られます。これをブルークリアリング現象と呼んでいますが、南極冠が最大になる季節に現われています。過去の記録からは、衝のころまで続くのではないかと思われますが、これからの観測が重要になってきました。
6月22日にはいよいよ最接近となります。残念ながら梅雨に入りますが、晴れ間をぬって観測を続けたいものです。
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写真3 ブルークリアリング現象 |
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撮影/新川勝仁氏(28cmシュミットカセグレイン、Minolta DimageEx1500)
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