6月23日UT頃、チュレニー北部とヘラス北部に発生した黄雲が偏東風にのって東に広がり、南半球だけでなく北半球をも覆い尽くしていく大黄雲の様子はカラーページで紹介しています。今回の大黄雲の広がり方には3つのパターンがあります。一つは、南緯30°付近に次々に明るい光斑が発生して東に進行したもの、二つ目は、大シルチスの東のリビヤの光斑を起点として赤道付近を東に拡散したもの、そして三つ目は7月1日UTにエリシウム北部に発生した黄雲から東に広がって北半球を覆ったものです。最初の黄雲の発生場所から離れた場所で次々と黄雲が発生していくことと、黄雲の広がり方に3つのパターンが見つかったことで、全球的な大黄雲の発生メカニズムを探る重要な手がかりになることでしょう。
火星軌道を周回しているマーズ・グローバル・サーベイヤ(MGS)の放射温度計(TES)でとらえた大黄雲の様子がインターネットで公開されています(http://tes.la.asu.edu/)。このアリゾナ州立大学の赤外光の観測から求めた火星大気中のダスト分布のアニメーションは、アマチュアのCCD観測からまとめた大黄雲の広がる様子とよく一致しています。
写真1 7月の火星 ほとんどの経度が黄雲に覆われ、地表の模様が見えません。 撮影/TA:荒川 毅(奈良市、30cmニュートン、NECピコナ) NI:伊藤紀幸(新潟県、60cmカセグレイン、SONY DCR-TRV20) TI:池村俊彦(名古屋市、30cmニュートン、NECピコナ) AK:風本明(京都市、20cmニュートン、NECピコナ)(拡大) |
7月の火星の様子を写真1にまとめましたが、南極雲と北極雲を除いて、見事に黄雲に覆われています。いつものっぺらの黄色いボールを見ているようで、火星面の特徴的な模様を見ることはできませんでした。その中で、オリンポス山とタルシスの3つの高山だけが、大黄雲の上に飛び出していて、かなり黒い斑点として見えていました。 2〜3ヶ月の間は黄雲に覆われた状態が続くと思われますが、いつ晴れてくるかもしれません。これまでの観測では高度の高い山岳部の黒い地肌が見えているようですが、このような場所から晴れてくるかもしれません。また、黄雲が晴れたら、模様がどのように変化しているかに注目したいと思います。
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