天文ガイド 惑星の近況 2002年1月号 (No.22)
伊賀祐一
10月の惑星観測は、火星が10名から124観測(24日間)、木星が19名から241観測(26日間)、土星が12名から49観測(18日間)の報告がありました。
火星 (安達 誠)
視直径は10秒を切り、月末には8.8秒まで小さくなって、小口径では模様の変化を見るのは難しくなってきました。それでも日没時の火星の高度は逆に高くなっていますので、継続して観測が続けられています。6月に発生した黄雲(ダストストーム)は、4ヶ月が経ち、次第に沈静化してきました。9月には淡くしか見えなかった表面の暗い模様が、ほぼ全周に渡って見えるようになっています。また、南極冠もすっかり小さくなりましたが、気流の良い時には非常にシャープに見えていて、2002年1月の南極冠消失までしばらくの間は観測できるでしょう。

写真1 火星の5-6月と10月の模様の比較
撮影/池村俊彦氏(名古屋市、30cmニュートン、NECピコナ)(拡大)

10月の火星面の特徴を、池村俊彦氏(名古屋市)の画像から作成した展開図(写真1)で紹介します。上は10月の展開図ですが、北半球高緯度には太陽光が当っていないので見ることができません。下は比較のための5月-6月上旬の展開図ですが、黄雲の発生前でヘラスがほとんど見えない特徴的な状態です。この直後にヘラスの東側に大黄雲が発生し、東進(図の左方向)しました。

まだ完全にダストが晴れ上がったわけではないので誤っているかもしれませんが、暗い模様について次のような変化が見られます。 (1) L=130°De=-30°付近のダエダリアが、濃く暗い模様として見られるようになった。 (2) L=230°De=-15°付近は、今までになく暗色模様が濃くなっている。 (3) L=80°De=-30°のソリスが、これまでと異なった形に変化している。 (4) L=290°De=0°の大シルチスが、非常に細くやせた姿に見える。

また、南半球の南緯40°付近には、明るいヘラスを起点として東西に細長い明るいバンドができています。このことは、依然としてダストストームが活動していることを示しています。例年ならば、大黄雲は南半球の晩春から盛夏にかけて発生しますので、ちょうどその季節を迎える2002年1月頃までは注意が必要でしょう。

木星
現在の木星で大きな変化を見せているのはNEB(北赤道縞)です。特に変化の激しい領域はII=100°から180°に限られます。NEB全体は拡幅期にあり、赤茶色の強いベルトです。現在のNEBのほぼ中央には細い組織が見られ、これが拡幅前の北組織に相当します。このやや北側に赤茶色のバージ(barge)が7個あり、10月中旬でII=48°,75°,104°,120°,173°,238°,272°,340°に見られます(このうち5個は昨年から継続)。また、NEB北縁には丸い小白斑ノッチ(notch)がII=130°,206°,250°,324°に見られます。

さて、これらのうちII=120°のバージとII=130°のノッチがともに9月初めから前進速度を速めています。そのために前方のII=104°にあるバージとの距離が縮まっていて、11月末には接近する様相です。もうひとつの注目はII=173°のバージで、やや大きめでNEB内の特異点になっています。このバージの前方25°のNEB中央では白斑が周期的に発生し、そこを起点としてNEB内を斜めに横切るリフト(rift)が発達を繰り返しています。これまでの観測を整理すると、白斑の発生は8月13日、28日、9月17日、10月7日、26日とほぼ20日間隔で起こっているようです。


写真2 10月25/26/27日の木星展開図
撮影/阿久津富夫氏(栃木県)、池村俊彦氏(名古屋市)、永長英夫氏(兵庫県)、伊藤紀幸氏(新潟県)(拡大)

GRS(大赤斑)はII=77°にあり、10月10日頃から南側を暗いアーチに取り巻かれるようになりました。10月末にはGRS直後の暗部が濃くなっていて、さらにアーチの活動が活発になることが予想されます。そして、GRSから前方のSTrZ(南熱帯)に向けてdark streakが形成されると思われます。ところで、GRS前方のSTrZには2個の暗斑が観測されています。調べてみると、最初は8月中旬にII=3°、9月末にはII=20°まで後退しているSEBs(南赤道縞南組織)の暗斑で、その後はSTrZの暗斑となってゆっくりと後退するようになっています。さらに10月19日にはII=34°にも新たな暗斑が出現しています。しばらくの間は、GRSの前方の経度(II=0°〜60°)のSTrZに注意してください。

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