現在の木星で大きな変化を見せているのはNEB(北赤道縞)です。特に変化の激しい領域はII=100°から180°に限られます。NEB全体は拡幅期にあり、赤茶色の強いベルトです。現在のNEBのほぼ中央には細い組織が見られ、これが拡幅前の北組織に相当します。このやや北側に赤茶色のバージ(barge)が7個あり、10月中旬でII=48°,75°,104°,120°,173°,238°,272°,340°に見られます(このうち5個は昨年から継続)。また、NEB北縁には丸い小白斑ノッチ(notch)がII=130°,206°,250°,324°に見られます。
さて、これらのうちII=120°のバージとII=130°のノッチがともに9月初めから前進速度を速めています。そのために前方のII=104°にあるバージとの距離が縮まっていて、11月末には接近する様相です。もうひとつの注目はII=173°のバージで、やや大きめでNEB内の特異点になっています。このバージの前方25°のNEB中央では白斑が周期的に発生し、そこを起点としてNEB内を斜めに横切るリフト(rift)が発達を繰り返しています。これまでの観測を整理すると、白斑の発生は8月13日、28日、9月17日、10月7日、26日とほぼ20日間隔で起こっているようです。
写真2 10月25/26/27日の木星展開図 撮影/阿久津富夫氏(栃木県)、池村俊彦氏(名古屋市)、永長英夫氏(兵庫県)、伊藤紀幸氏(新潟県)(拡大) |
GRS(大赤斑)はII=77°にあり、10月10日頃から南側を暗いアーチに取り巻かれるようになりました。10月末にはGRS直後の暗部が濃くなっていて、さらにアーチの活動が活発になることが予想されます。そして、GRSから前方のSTrZ(南熱帯)に向けてdark streakが形成されると思われます。ところで、GRS前方のSTrZには2個の暗斑が観測されています。調べてみると、最初は8月中旬にII=3°、9月末にはII=20°まで後退しているSEBs(南赤道縞南組織)の暗斑で、その後はSTrZの暗斑となってゆっくりと後退するようになっています。さらに10月19日にはII=34°にも新たな暗斑が出現しています。しばらくの間は、GRSの前方の経度(II=0°〜60°)のSTrZに注意してください。
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