@ mid-SEB outbreak
2002年12月に発生したmid-SEB outbreak(南赤道縞中央の白斑の突発現象)の活動は、大赤斑の後方に今月も見られました。mid-SEB outbreakは、II=140°付近の発生源から白斑が次々と供給され、SEB内を前進しています。大赤斑の後方には定常的な擾乱(じょうらん)領域がありますが、SEBnの暗部やストリークで区切られているために、今回の活動はmid-SEB outbreakの発生と考えられます。
図1に示すように、12月14日UTに発生した白斑は輝きを増し、SEBnに潜り込むように前進しました。画像からではEZs(赤道帯南組織)に吹き出しているようです。12月23日UTにはさらに発生源から新しい白斑が供給されました。2003年1月に入ると、4日UT、20日UT、28日UTと、ほぼ10日周期で新しい白斑が供給されています。これらは特徴的なmid-SEB outbreakの現象ですが、第1次の白斑の活動ほど輝度のないものでした。1998年3月に発生した同現象の模式図を図2に示しますが、前回はII=350°が発生源で、大赤斑後方までの経度差が240°もあり、半年間の活動期間と合わせて過去最大クラスのものでした。今回の出現は大赤斑後方での発生であり、大赤斑後方の擾乱領域がどのように影響を受けるのか注目しています。
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図1 mid-SEB outbreak |
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撮影/永長英夫(兵庫県)、風本明(京都市)、T.W.Leong(シンガポール)
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図2 1998年のmid-SEB outbreakの模式図 |
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A NTBの淡化と北温帯流-B
NTB(北温帯縞)は全周で淡化し、またNNTB(北北温帯縞)も今シーズンは淡くなっているので、北半球には目立った模様は見えなくなりました(図3)。NTBは11月中旬に突然淡化が始まり、1ヶ月後には完全に全周のベルトが消失しました。何かのきっかけがあったのではないようで、全周に渡ってすーっと消えていきました。実に14年ぶりの現象です。
NTBは、かつては数年周期で淡化と濃化を繰り返すベルトでしたが、1990年以降は濃いベルトの状態を保っていました。そしてNTB南縁には、北温帯流-Cと呼ぶ木星面最速のジェット気流(9時間46-47分)に乗った模様が頻繁に観測されました。この北温帯流-Cの模様が、2001年以降は見えなくなっていて、活動パターンに変化が起こったものと思われます。
さて、淡化したNTBの緯度には、2ヶ所で短い暗部(BAR)だけが見られます。図3でII=310°とII=10°にあり、それぞれの長さは10°と25°です。この2個の暗部は、-45°/月というかなり速いドリフトを示していて、9時間54分40秒の自転周期を持っています。この自転周期は第I系と第II系の中間の値で、北温帯流-Bというジェット気流に属するものと思われます。北温帯流-Bは過去に観測された平均の自転周期では9時間53分8秒ですが、これよりはやや遅いものです。堀川邦昭氏によれば、過去に8回観測されてはいるものの、1945年以降は観測例はないという貴重な現象とのことです。
図3 2003年1月11/12日の木星展開図 撮影/永長英夫(兵庫県)(拡大) |
B SSTB白斑の近年の動き
SSTB(南南温帯縞)には5個の小白斑が見られますが、1月にはちょうど大赤斑の南側に位置しています。最近のSSTB白斑の動きを図4にまとめてみました。2001年11月頃には7個の小白斑が、経度165°の範囲に分布していました。後方の4個の小白斑はかなり接近していましたが、最も後方の2個の小白斑はさらに接近し、2002年3月にマージ(合体)し、一つの白斑になりました。中段の画像はマージ直前のもので、お互いの白斑が左回りに回転をしている様子が見られます。
今シーズンの初めの2002年10月には、SSTB白斑は5個になり、さらに経度が90°の範囲に狭まっていました。合の間に後方の2個の小白斑のマージが起こったのではないかと思われます。図5は、9時間55分05秒という特殊な経度でプロットしたSSTB白斑の動きです。後方の白斑が前進速度を速めて、白斑間の距離が短くなっていることが分かります。また、これらの白斑は、意外に経度がふらついているものです。
図4 SSTB白斑の動き 月惑星研究会への報告画像から作成(拡大) |
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