火星は8月1日には視直径22.4”で、27日の大接近時には視直径が25.1"まで大きくなりました。実は8月1日には火星は十分に大きくなっていて、大接近でも視直径で12%、面積で26%増える程度で、細かな模様までを堪能することができました。
画像1 8月の火星 撮影/前田和義(亀岡市、35cm反射)、松本博久(鳥取県、31cm反射)、阿久津弘明(北海道、28cm反射)、畑中明利(三重県、40cmカセグレイン)、森田光治(滋賀県、20cm反射)、荒川 毅(奈良市、30cm反射)、林 敏夫(京都市、35cmSCT)、永長英夫(兵庫県、25cm反射)(拡大) |
画像1は、特集記事で取り上げることができなかった観測者の8月の画像を日付順に並べてあります。これらの観測は、25cm〜40cmの望遠鏡と今年ブームになったToUcam Proの組み合わせで撮影されたものですが、森田光治氏(滋賀県)だけは20cmとデジカメPICONAで撮影されています。7月29日にクリセに発生した黄雲は南方に広がりましたが、8月4日頃にはおさまってしまいました。ただ、今年の火星は真っ赤な惑星ではなくて、ずっと大気中にダストが漂っているのでしょうか、模様のコントラストが低いままで、黄色の惑星の印象でした。画像処理のおかげで、画像では模様はコントラスト良く見えていますが、実際に望遠鏡で見ると模様は見えにくいものでした。
画像2は、7月16日から8月29日までに撮影された池村俊彦氏(名古屋市)の8枚の画像から作成した展開図です。この1ヵ月半の間に、模様が大きく変わったような変化はありませんでした。展開図は右から左に時間が経過しているのですが、南極冠の内部に薄暗い模様が出現し、それが大きな南極冠の割れ目に成長する様子と、8月中旬以降に急激に南極冠が縮小する様子が分かります。
画像2 7月16日〜8月29日の火星展開図 撮影/池村俊彦(名古屋市、31cm反射)(拡大) |
9月に入ると、火星暦では南半球の盛夏となり、太陽の輻射熱を吸収しやすくなります。火星の大気は薄いので、大気の加熱は上昇気流に密接に結びつきます。1971年や1977年の大黄雲はこのような季節に発生しています。大接近が終わっても、視直径はまだまだ大きく、火星から目が離せません。
●フォボスとダイモス
フォボスとダイモスは火星の2個の衛星で、それぞれは14km×10kmと8km×6kmのいびつな大きさをしています。大接近時にはフォボスは10.3等、ダイモスは11.4等の明るさになりますので、大接近時には十分に地上から観測することができる対象だと言われていました。
かわべ天文公園の小嶋孝弘氏(和歌山県)から、8月22日UTに1mカセグレインを用いてデジカメによるフォボスとダイモスの画像が届きました。露出オーバーの火星の光芒の中に、2つの衛星がとらえられています。1mという大きな口径でなくても、同じ22日UTに、前田和義氏(亀岡市)が35cm反射を用いて、ToUcam Proでフォボスの移動をとらえることに成功しました。また、透明度の良かった9月6日UTには、池村俊彦氏(名古屋市)が31cm反射とToUcam Proで2つの衛星の撮影に成功しました。池村氏からは眼視でもフォボスの検出に成功したそうですが、ダイモスは検出できなかったそうです。
画像3 火星の衛星の検出 撮影/小嶋孝弘(和歌山県、1mカセグレイン)、前田和義(亀岡市、35cm反射)、池村俊彦(名古屋市、31cm反射)(拡大) |
●その他の惑星
火星と同じみずがめ座には天王星があり、8月25日に衝をむかえました。等級は5.7等で視直径は3.7"でした。その隣のやぎ座には海王星があり、こちらは8月4日に衝をむかえました。海王星は7.9等で視直径は2.3"でした。天王星の観測は7名から10観測(海外は5人)。海王星の観測は海外の2名から2観測を受け取りました。どちらの惑星も大気はメタンからできていて、そのためにきれいな青緑色に見えます。
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画像4 天王星 |
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撮影/小嶋孝弘(和歌山県、1mカセグレイン)
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また、明け方には土星が東の空に昇ってきています。火星騒ぎで忘れられていた感じがありますが、今シーズンもリングが南に大きく開いた姿を見せてくれています。
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画像5 明け方に昇る土星 |
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撮影/池村俊彦(名古屋市、31cm反射)
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