9月の火星は、南半球ではいよいよ盛夏を迎えました。9月の観測画像を画像1にまとめました。今年の火星面は、火星大気中にダストが漂っていたためか、全体的にコントラストが低いままでした。
南半球が暖かくなったために、南極冠は急速に縮小しています。ドライアイスの霜からできている季節的南極冠は、真の南極から偏芯していますが、その溶け方も一様ではありません。9月1/2日の画像ではチューレ山が溶け残り、南極冠内部に暗い筋が見られます。11日から17日の画像では、ミッチェル山がきれいに分離している姿が見られます。9月上旬のアメリカでの高解像度の画像(D.Parker、E.Grafton)によると、ミッチェル山が2-3個に分離している様子がとらえられています。ミッチェル山は日本からは9月18日に観測されたのが最後になり、その後はヨーロッパで9月25日にD.Peach氏(イギリス)、27日にC.Fattinnanzi氏(イタリア)の観測で完全に消失したものと思われます。
画像1 9月の火星面 撮影/熊森照明(堺市、20cm反射)、池村俊彦(名古屋市、31cm反射)、畑中明利(三重県、40cmカセグレイン)、前田和義(京都府、35cm反射)(拡大) |
今後の南極冠はさらに溶けて、(30W、86S)を中心とした永久南極冠だけが残ります。画像2はマーズ・グローバル・サーベイヤ(MGS)がとらえた2002年1月中旬の画像です。この画像はLs=309°に撮影されたもので、今年に換算すると11月末の季節に相当します。夏でも残っている永久南極冠は直径が420kmしかなく、この頃には視直径は11秒になってしまいます。いつまで南極冠が見えるのか、注目されます。
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画像2 MGSのとらえた永久南極冠 |
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画像提供/NASA(2002年1月15日撮影)
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9月の特徴としては、朝霧や夕霧が目立つようになったことでしょう。極冠の縮小とともに、これらの霧が目立つようになることは良く知られていることですが、今回の接近でも同様な現象が見られました。朝霧は火星面西端(画像の右側)に見られ、青白く観測されます。また北極付近にも青白い極雲が見られ、特に9月11日や15日の画像では極雲が顕著でした。アルカディア地方を覆う極雲が短期間で姿を変える様子がとらえられました。
高山にかかる山岳雲は、オリンポス山・タルシス3山・エリシウムなどが有名ですが、今シーズンはタルシスの最南のアルシア山だけにかかる雲が観測されました(9月1日の画像)。この雲も火星面での午前には見られないで、午後から夕方に顕著になっています。もう一つ火星面で見られる雲に、低緯度地方の青白い氷晶雲がありますが、9月中旬にソリスからオーロラ湾にかけて観測されました。
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