10月の火星は最接近から1ヶ月を過ぎたわけですが、月初めには20秒だった視直径が月末には15秒まで小さくなりました。視直径が15秒というのは最接近時の25秒の0.6倍ですが、面積としては0.36倍にもなり、本当に小さくなったと感じます。11月末には10秒台、そして12月末には8秒台まで小さくなりますが、火星の赤緯が上るので夕方の高度は逆に高くなります。冬の季節風が落ち着いた条件なら追跡がまだまだ可能です。
画像1 10月の火星面 撮影/柚木健吉(堺市、20cm反射)、池村俊彦(名古屋市、31cm反射)、熊森照明(堺市、60cmカセグレイン)、畑中明利(三重県、40cmカセグレイン)、瀧本郁夫(香川県、31cm反射)(拡大) |
日本からの観測(画像1)では、10月初めはキムメリウムからシレーン海が観測されましたが、キムメリウムから北に伸びる2本の雫状の模様はまだとらえられています(10月1日)。この視直径でも検出できるのはToUcam PROによる観測技術の進歩によるものでしょう。その後はソリス(太陽湖)付近が観測され、8日は非常に好条件に恵まれました。この経度は2001年6月の大黄雲発生によって大きな影響が残っている地域で、濃化したダエダリアや形を変えたソリスはとても印象的でした。なお、右下にはオリンポス山が見えています。
中旬を過ぎるとオーロラ湾付近が観測されましたが、火星の西端(画像では右端)には青白い朝霧が広がっていました。この頃は北半球のアキダリウムをおおう雲が目立ち、毎日のようにその姿が変化する様子が観測されました。24日頃にはサバエウスから子午線湾の経度が見られ、今年の7月1日にヘラス北部で発生した黄雲の影響で大規模に濃化したデューカリオンからノアキス北部が観測されました。この地方は、大黄雲発生直後に表面の砂が巻き上げられて地肌がむき出しとなって暗く見えたものと思われますが、次第に明るさを取り戻しつつあるようです。そして、月末には大シルチスからヘラス地方が観測されました。
火星の南半球の季節はいよいよ夏至(Ls=270)を過ぎてしまいました。季節的南極冠はますます縮小していきます。特に0°Wの方向に偏芯していますので、サバエウス地方が見えるときは南極冠が見えやすくなります。11月末までは季節的極冠は観測できるのではないかと思いますが、視直径が小さくなるので永久南極冠が見え続けるものかどうか興味深いところです。
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