火星は、月初めに15秒だった視直径が月末には11秒まで小さくなりました。大接近時と比べてずいぶんと小さくなったと実感しますが、観測機材の進歩のおかげでまだ細かな模様までとらえられています(画像1)。
画像1 2003年11月の火星面 撮影/池村俊彦(名古屋市、31cm反射)、荒川 毅(奈良市、30cm反射)、瀧本郁夫(香川県、31cm反射)、永長英夫(兵庫県、25cm反射)、熊森照明(堺市、60cmカセグレイン)、畑中明利(三重県、40cmカセグレイン)(拡大) |
火星の季節を示す太陽黄経Lsは290〜308°で、南半球では盛夏をむかえました。画像を見ると、まず眼につくのは南極冠の縮小です。ドライアイスの霜からできている季節的南極冠は、夏には大気温度が上昇すると溶けて(昇華)、最後には直径420kmの永久南極冠だけが残ります。過去の地上からの観測では、Ls=310°ぐらいまでしか南極冠は確認できませんでした。これは今シーズンでは11月末に相当しますが、画像ではまだしっかりとした南極冠をとらえています。南極冠は12月中旬頃には最小になると予想されますが、ToUcam PROのおかげかもしれませんが、まだしばらくは追跡できそうです。
火星の大黄雲は過去には南半球の春から夏にかけて発生していますが、これまでに観測された中で最も遅く発生したのは、1973年のソリス大黄雲で、このときのLsは300°でした。11月中旬にはこの季節を過ぎてしまいましたので、残念ながら全球的な大黄雲の発生は起こらなかったことになります。今シーズンは、7月1日にヘラス北部で地域的黄雲が発生し、さらに7月29日にクリセでも地域的黄雲が発生しました。これによって、大気中に巻き上げられた砂の粒子は、長い間漂っていたと考えられます。このために、今シーズンの火星は眼視で見る限りでは、非常にコントラストの低いままでした。しかしながら、大気上層をおおう浮遊ダストのために、逆に地表面が暖められにくく、全球をおおうほどの規模の黄雲が発生しなかったと言えるかもしれません。
その他の火星面では特に変化は見られませんでした。火星の西端(画像の右)には青白い朝霧が発生している様子が見られ、シルチスやソリス付近ではかなり太陽高度が高くなるまで残っていました。また、北極地方をおおう北極雲も期間中ずっと見られました。
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