天文ガイド 惑星の近況 2005年3月号 (No.60)
伊賀祐一
2004年最後を締めくくる12月の惑星観測です。1月14日に衝をむかえる土星の観測は、28人から28日間で486観測(そのうち海外は16人で143観測)と多くの報告を受け取りました。4月4日に衝となる木星は、明け方には高度も高くなり条件が良くなり、少しずつ観測が増えていますが、21人から30日間で298観測(そのうち海外は12人で48観測)でした。その他の惑星では、3月29日の外合となる明け方の金星が、海外の2人から4日間で6観測のみありました。今年の10月30日に準接近となる火星の観測がいよいよ始まり、T.Olivetti氏(タイ)が視直径4.1秒で表面模様をとらえています。

なお、国内の観測者では、土星では瀧本郁夫氏(香川県)が19日間で92観測、柚木健吉氏(堺市)が17日間で109観測、木星では永長英夫氏(兵庫県)が20日間で119観測、瀧本郁夫氏が16日間で93観測とがんばっておられます。

木星:2004年12月

@ 幅広いNEB

NEB(北赤道縞)は拡幅期をむかえて、木星面でもっとも目立つベルトになりました。NEBの幅は、その北側のNTrZ(北熱帯)の中央の緯度まで広がっていて、さらにNEBの色合いも近年にない赤みの強いベルトです。NEBはまだまだ発展中ですが、拡幅期に典型的に見られるパターン、すなわちbarge(バージ)とnotch(ノッチ)の組み合わせが観測されるようになってきました。bargeは太くなったNEB中央に見られる赤茶色の楕円体で、notchはNEB北縁に取り残された白斑です。12月現在では、bargeがII=140°,175°,220°に、notchがII=130°,190°に見られます。まだ、これからbargeやnotchが増えていくものと思われます。

また、NEB中央には斜めに横切る白い白雲であるrift(リフト)が見られます。riftは、NEB中央で発生した白斑が、NEBの東西流によって経度方向に引き伸ばされていく現象です。riftの寿命は3週間ぐらいが多いのですが、継続して白斑が発生すると2-3ヵ月にも及ぶものがあります。12月では、II=170〜270°に見られるものが経度方向の長さが100°に達するものでした。それ以外にも、II=310〜340°付近とII=40〜100°付近にもriftが発生しました。

NTB(北温帯縞)は、2002年12月に淡化したままの状態が続いています。NNTB(北北温帯縞)は、II=0〜40°に暗部が見られますが、それ以外の経度では高速に前進する暗斑群が見られています。


画像1 2004年12月の木星
撮影/永長英夫(兵庫県、25cm反射)(拡大)

A SEBの動向

SEB(南赤道縞)も、近年ではあまり変化のない太いベルトのままです。11月にII=160°付近から前方に、白雲がGRS(大赤斑)まで広がっていましたが、それも次第に衰えました。新たに12月9日にII=160°のSEBに明るい白斑が生まれましたが、これも前回と同様にすぐに衰えてしまいました。この大赤斑後方には、定常的な擾乱領域が見られており、この活動そのものはSEBの淡化にはつながらないものです。

高分解能の画像では、II=160−100°までの多くの範囲に、SEBの中央に1本のベルト(SEBc)が見えており、SEBc-SEBnにかけて、細かな白斑が見えています。また、SEBsには、高速に後退する暗斑群が観測され、それらがGRSの経度まで達したものもあります。

大赤斑は、II=98°付近にあり、毎年ゆっくりと後退しています。今月は特に変化は見られませんでした。STB(南温帯縞)にある白斑'BA'は、II=18°付近に位置しています。2004年7月に大赤斑の南側を通過して、何らかの変化が期待されましたが、そのままの姿が観測されています。'BA'の周囲は暗く縁取られていますので、観測しやすいと言えます。この'BA'の後方80°ほどの経度のSTBが濃いベルトとして見えています。STBのさらに南のSSTB(南南温帯縞)には、全周で6個の小白斑が観測されています。そのうちの5個の小白斑は、II=80-170°の範囲にきれいに並んでいて、ちょうど大赤斑の南を通過しているところです。


画像2 2004年12月の木星展開図
撮影/永長英夫(兵庫県、25cm反射)、阿久津富夫(栃木県、20cmSCT、撮影地セブ島)(拡大)

土星
12月の土星ですが、1月14日に衝をむかえるので観測条件は良さそうですが、国内の観測は冬季の季節風の影響をまともに受けてしまいました。画像3に示すのは、上がD.Peach氏(イギリス)、下左がP.Lazzarotti氏(イタリア)、下右が池村俊彦氏(名古屋市)の観測です。D.Peach氏の画像は235mmSCTによる観測ですが、高精細な表面の模様、複雑なリングの様子、カッシーニの空隙を通して土星本体が見られることなど、すばらしい画像です。


画像3 2004年12月の土星
撮影/D.Peach(イギリス、23.5cmSCT)、P.Lazzaarotti(イタリア、25cm反射)、池村俊彦(名古屋市、31cm反射)(拡大)

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