@ 活動的なNEB
NEB(北赤道縞)は2001年以来の完全な拡幅期に入り、幅が広く、さらに赤みの強いベルトが続いています。拡幅期の特徴としては、NEBの中央に細いベルト(本来のNEBn)が出現し、そのベルト上に赤茶色の暗斑barge(バージ)が現れてきます。NEB内部には、NEB中央に白斑が出現し、それが東西流によって斜めに引き伸ばされたrift(リフト)に成長します。riftの動きはII系よりも速く、bargeなどをかなり速い速度で追い越していきます。
1月末では、bargeはII=30,170,355°の3個見られます。12月にII=220°にあったbargeは、1月5日頃にriftの通過で消失し、1月19日にII=300°で生まれたばかりのbargeも25日頃にはriftの発生で消失しました(画像3)。また、全周では4個のriftがありますが、II=80°のriftは特異的です(画像2)。白斑の発生がNEB北部に偏っているので、このriftだけはあまり移動しません。これは2001年の際にもII=150°に出現した特異riftと同じかもしれません。
1997年に出現してから継続しているform-Zと呼ばれるNTrZ(北熱帯)の白斑は、今シーズンもII=65°に健在です。他にもNEB北縁に湾入した白斑notch(ノッチ)が、II=130,190,230,350°に見られます。
|
画像1 2005年1月27日の木星 |
|
撮影/永長英夫(兵庫県、25cm反射)
|
|
|
画像2 NEBのリフトの活動 |
|
B1B3B5がバージ、N2N4がノッチ、R1R2R3がリフト。R1リフト通過でB3バージ消失。R3リフト通過でB5バージ消失。
|
|
A SEBの動向
SEB(南赤道縞)では、大赤斑後方の定常的な擾乱領域の活動はおとなしいままです。今シーズンは、II=110°付近からII=160°までの領域で、白雲の活動が見られますが、明るい白斑が出現することはありませんでした。一度、II=160°で発生した白斑は前進し、活動範囲が次第にII=120-130°までに狭まり、約1ヶ月を周期として、再び白斑の発生が繰り返されています。その他のSEBは、ベルトの真ん中にSEBcの細いベルトが目立ちます。
SEBsにはSEBsジェット気流に乗って高速で後退している暗斑やプロジェクションが見られます。II=180°付近から後方で盛んに暗斑群が活動し、大赤斑の前方まで達するものがあります。その中で、12月末にSTrZ(南熱帯)のII=40°に位置していたドーナツ状のリング暗斑が、10日間で20°ほど後退しました。しかし、その後はII=60°で停滞し、新たにII=40°の元の位置に別なリング暗斑が出現しました。どうも、大赤斑の40°ほど前方の経度は特異的な位置なのかもしれません。さらに、この特異なリング暗斑を越えて、別な暗斑が急速に後退しています(画像1)。1月末に大赤斑孔の前端に達し、このまま大赤斑の巨大な渦に巻き込まれるでしょう。
B大赤斑
大赤斑(GRS)の位置がついにII=100°を超えました。1974年にはII=12°付近にあり、ゆっくりと後退していたが、近年では1年に+5°ずつ後退していました。古くからの観測者にとっては、大赤斑の経度が100°を超えるというのは、不思議な気がします。
1月中旬にSSTB(南南温帯縞)白斑がSTB(南温帯縞)白斑BAを追い越しました。この時に、BAの形状に変化があり、やや大きくなったような気がします。BAの1月末での位置はII=10でした。
画像3 2005年1月17/19日の木星展開図 撮影/永長英夫、瀧本郁夫(香川県、31cm反射)、C.Go(フィリピン、20cmSCT)、Z.Pujic(オーストラリア、31cm反射)(拡大) |
|