7月に入ると視直径は10秒を越え、10月30日の最接近の時のおよそ半分の大きさになりました。Lsが240°(火星暦では11月)を越え、暗い模様のほとんどを占める南半球は晩春をむかえています。発達した南極冠は、急速に縮小を開始しています。6月には、極冠の中にドーナツ状に淡くなった部分が形成され、周辺部がリング状に明るくなっていく様子が観測されました。
南極冠のエッジを取り巻くようにできるダークフリンジは、非常に良く目立ち、南極冠はきりっと引き締まった姿を見せていました。7月10日には、南極冠の縁にミッチェル山が南極冠から分離し、はっきりした姿を見せるようになりました。
暗い模様で特徴的なものとしては、ケルベルス(210W,+15)が久し振りに濃い斑点として見えるようになっています。この周辺は暗い模様や高地があり、変化の激しい地域だけに、今後の変化に注目したいと思います。
7月中旬、南半球の中緯度はダストのベールにおおわれ、模様のコントラストが低くなりました。このダストベ−ルの発生源ははっきりしませんでした。これは1975年(1971年の大接近後の2回目の接近で、今年と同じ条件の火星の様子が観測されました)とほとんど同じ現象で、興味深い現象です。1975年にはこのような条件の後、大黄雲が発生しているため、注意を要します。7月末には濃い模様として有名なメリディアニ(子午線の湾)も一時的に淡くなってしまいました。
火星面にはいくつかの、成層火山があります。オリンピア山のすぐ東側に位置するタルシスには3つの火山が知られていますが、そのうち最も北にあるアスクラエウス山が黒い点として見えてきました。また、7月22日にはオリンピア山もはっきりとした黒い点として観測されるようになりました。北半球の山にはまだ雲がかかっておらず、ここしばらくは、これらの火山は黒い点として見えることでしょう。この黒い点状の火山はいずれも肉眼でみるには大変ですが、画像を調べると赤い色をした斑点であることが分かります。火星の火山の特有の色合いです。
これらの山々やエリシウム(215W,+30)がどのような見え方になるでしょうか。また、低緯度地方にはこれから淡い雲が見えてきます。視直径も大きくなり、火星はこれからが面白くなります。
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画像3 2005年7月の火星 |
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撮影/E.Grafton(アメリカ、35cmSCT)、R.Heffner(愛知県、28cmSCT)、瀧本郁夫(香川県、31cm反射)、D.Parker(アメリカ、40cm反射)、永長英夫(兵庫県、25cm反射)、安達誠(大津市、31cm反射)
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