2006年の最初に小規模なダストストームが発生し、幸いにも日本から観測できました。視直径は月末には8秒台までさがり、しだいに観測は厳しくなってきました。ただ、火星の地平高度は高く、気流さえ良ければまだまだ観測は十分にできます。
@ ダストストームの発生
1月7日、2ヶ所でダストストームが確認されました(画像4)。前日の1月6日に、安達が眼視観測でリムが明るくなっている様子を見ていますが、確実な姿をとらえたのは1月7日のことで、米山誠一氏(横浜市)が最も早い記録でした。クリセ(35W,+10)が黄色に明るく輝いている姿をとらえており、かなり大きな広がりであるため、おそらく1-2日前に発生したものと考えられます。また、同日には、熊森照明氏(堺市)がソリス(90W,-25)の北側に帯状にたなびくダストストームを記録しています。熊森氏の画像ではソリスのダストストームの方が目立っていました。
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画像4 2006年1月の火星 |
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撮影/米山誠一氏(横浜市、20cm反射)、熊森照明(堺市、60cmカセグレイン)、D.Peach(イギリス、35cmSCT)、D.Parker(アメリカ、40cm反射)
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クリセで見つかったダストストームは一気に淡くなり、翌8日には明るさが落ちてしまいました。一方、ソリスの北側で見つかったダストストームは大きな変化をせず、数日この状態を保っていました。おそらく、ダストストームによって、表面の模様が変化したのでしょう。
1月11日にはマルガリティファー(20W,-10)からノアキス(0W,-40)にかけて、広範囲の模様のコントラストが低くなり、広い地域にダストストームがベール状に拡散しました。その後、このダストベールはしだいに落ち着き、約1週間で元の姿に戻っていきました。大きな変化には至りませんでしたが、まだまだダストストームの発生には注意が必要です。
A 北極雲と南半球の白雲
火星の大気の水蒸気は、現在北に集まり、北極冠が形成されています。極をおおう雲がしだいに晴れてくると、その下から白い北極冠が姿を現わします。DEの値がまだ低く、条件は良くありませんが、気流の良い時には特に注意を払って監視したいものです。
南半球は残った水蒸気が目立った変化を見せるようになっています。夜明け後の南緯45°付近はここしばらくいつも霧が出て、火星面の正午頃まで見えていましたが、この傾向が顕著になり、とうとう日中ずっと見えるようになりました。時を同じくし、南半球にある大規模構造盆地のアルギレ(30W,-50)や ヘラス(290W,-50)に目立った霧が見えるようになりました。
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