@ 最盛期のmid-SEB outbreak
mid-SEB outbreakは、2005年12月18日の発生から3ヶ月が経ち、その活動の最盛期にあります。画像1に3月の活動をまとめてありますが、白斑の連鎖である活動の主要部の長さは、月初にはII=220-325°の105°、月末にはII=190-315°の125°に拡がっています。この活動領域の後端部がoutbreakの発生源で、-9°/月のドリフトで前進をしていて、3月2日にはII=325°でした。ところが、3月8日から17日にかけて、後端部の活動はII=295°まで一気に30°の領域が縮小し、再び3月29日にはII=315°に白斑が出現しました。発生源の位置は、このように周期的な脈動を繰り返すようです。
outbreakの白斑群は、白斑が青黒い暗柱に区切られた特徴的な様相を示します。発生源の前方では、SEB内をやや南側へ膨らむように白斑が前方に拡がっていきます。海外からの気流に恵まれた高分解能画像(3月8日)を見ると、SEB中央のやや南よりの位置に明るく小さな白斑がいくつも観測されました。どうやら、この一つ一つの小白斑がoutbreakの白斑に成長しているようです。これまでは、白斑は発生源だけで出現し、それがそのまま前進していると考えていましたが、どうやら誤っていたようです。outbreakの本質は、白斑が発生する領域が前方に拡がり、あちらこちらで白斑が出現しているのかもしれません。
一方、outbreakの前端部は、大赤斑後方撹乱(post-GRS disturbance)の領域に到達し、その活動が抑えられてきています。それは、活動がSEB内の北寄りにシフトして、狭いSEBnの範囲に限定されることを意味します。白斑や暗柱の大きさがより小さくなり、次第に活動が消失します。そういう意味では、今回のoutbreakの活動はこれ以上前方には波及しない時期にありますから、今がもっとも活動が盛んであると言えるかもしれません。
画像1の下段に、1998年のmid-SEB outbreakの様子を示します。この年は3月末にoutbreakがII=350°付近で発生しており、発生後4ヶ月の様子です。今年と非常に似た大規模スケールのoutbreakでした。1998年は発生後5ヶ月経った9月頃から、後端部から活動領域が段階的に縮小していく様子がとらえられています。
画像1 mid-SEB outbreakの発達と1998年の現象 撮影/ 2006年:月惑星研究会、1998年:浅田秀人氏(拡大) |
A 赤みの強いSTB白斑BA
大赤斑の右上に近づいているSTB(南温帯縞)の白斑BAが赤くなっていることで注目されています(画像2)。BAが赤くなった最初の観測は、国内では1月8日の永長英夫氏の画像ですが、BAAからの情報では12月18日からと伝えています。これまでの国内の観測ではBA全体が赤くなっていると考えられていましたが、これも今月の海外からの高分解能画像で詳細が分かってきました。拡大図に示すように、五角形をしたBAの暗い縁取りの内部にオレンジ色の楕円体があり、これがBAを形成する渦そのものだと考えられます。しかし、渦の中心部は白く見え、オレンジ色のリングと言えます。NASAはハッブル宇宙望遠鏡を4月8日、16/17日と木星に向けて、BAの現象解明に動くスケジュールを発表しました。
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画像2 STB白斑'BA'の詳細 |
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撮影/ Christopher Go氏(フィリピン、28cmSCT)
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画像3 2006年3月6/9/10日の木星展開図 撮影/ R.Heffner(名古屋市、28cmSCT)、D.Parker(アメリカ、40cm反射)、B.Turner(オーストラリア、25cm反射)(拡大) |
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