@赤くなったSTB白斑"BA"
1月頃からSTB(南温帯縞)の白斑"BA"が赤くなり、3月にはその五角形をしたBAの内部にオレンジ色のコアが高解像度画像で確認されました。そして、そのコアの中心部は白く、BAコアはオレンジ色のドーナツの形状であることが分かってきました。これまで、メタンバンドでの画像で大赤斑とBAは両方とも明るいことから、どちらも木星の雲の上層部まで吹き上げる巨大な渦であることが知られています。そのBAが、大赤斑と同じく赤くなったことで、大赤斑のような巨大な渦の謎に迫ることができるかもしれません。
プロの研究者も注目するBAをとらえるために、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が撮影した木星が画像1です。HSTが木星を撮影するのは、実は久しぶりのことです。濃いオレンジ色のBAコアの詳細がとらえられていて、反時計回転の渦であることがよく分かります。BAコアの中央部がなぜ白いのか、この答えはまだ見つかっていません。
BAは4/28にはII=147°に位置していて、ドリフトは-12.5°/月でゆっくりと前進しています。一方、大赤斑の位置はほぼII=110°にありますから、BAが大赤斑の南を通過するのは7月です。2つの赤い斑点が衝突するのでは、と期待する人がおられるかもしれませんが、決してそのようなことは起こりません。BAは約2年ごとに大赤斑を追い越していて、いつも無事に通過しているからです。
画像1 HSTの撮影した赤いSTB白斑"BA" 画像提供/ NASA 撮影:2006年4月8日(拡大) |
A大赤斑後方にせまるmid-SEB outbreak
2005年12月18日にII=350°に発生したmid-SEB outbreakは、4ヶ月を経過しました。活動の後端部が発生源で、今月はII=310-295°に前進しました(画像2)。mid-SEB outbreakの最も白斑の活動が見られるのは、発生源から前方100°の領域で、SEB(南赤道縞)の北側の2/3を白斑と青黒い暗柱で埋め尽くしています。II=200°を境界として、それより前方では、outbreakの活動は次第にSEBの北に狭まってきます。
さて、outbreakの活動の前端部はどこまで伸びているのでしょうか。3月は前端部を示す暗部がはっきりとしていましたが、4月に入ると境界が分かりにくくなりました。それは、outbreakの前端部が大赤斑後方まで迫ってきて、定常的に見られる大赤斑後方擾乱領域と区別がつかなくなったためです。II=160-140°の領域では、2つの活動が入り混じっているのではないかと思っています。
|
画像2 大赤斑後方にせまるmid-SEB outbreak |
|
定常的な大赤斑後方擾乱と複雑に入り混じっている。
|
|
B大赤斑とdark streak
大赤斑の南側に暗いアーチがかかり、さらに大赤斑の前方のSTrZ(南熱帯)に細いdark streakが見られます。
CSTB〜SSTB
STBのII=300°には独立した丸い暗斑が出現し、この緯度の他の模様よりも速い-25°/月のドリフトで前進を続けています。STBnには非常に小さな暗斑が、4/3にII=53°、4/30にはII=325°とドリフトが-90°/月で高速に前進しています。
SSTB(南南温帯縞)には8個の小白斑があります。4月末の位置は、II=245、270、320、350、30、50、80、130°で、4-5番目の間と6-7番目の間には細長い明部(これは小白斑とは逆回転の渦領域)があります。
画像3 2006年4月13/15/16/17日の木星展開図(拡大) |
DNEB
NEB(北赤道縞)は比較的穏やかなベルトです。NEB北縁には8個の白斑ノッチがありますが、長寿命の白斑"Z"はII=240°に位置しています。
|