@まだ活発なmid-SEB outbreak
mid-SEB outbreakの発生源はII=280°から270°までゆっくりと前進していますが、活動の前端部は大赤斑のすぐ後方に達し、150°の経度に渡って白斑が活発に出現しています。outbreakの発生から5ヶ月を経過し、最も広がった様子を見せています(画像1)。大赤斑後方の定常的な擾乱領域も、後方からのoutbreakの圧力で、ほとんど見えなくなりました。
画像1 大赤斑後方に達したmid-SEB outbreak(拡大) |
さて、今月は大赤斑前方のSEB北部にも、小さな白斑と暗柱がびっしりと並ぶ様子が観測されました。mid-SEB outbreakの前端部の白斑が大赤斑直後に達したのが4月10日頃で、大赤斑前方のSEB北部に白斑が見られるようになったのが4月末です。大赤斑前方の白斑群の前進速度はmid-SEB outbreakのものと同じです。過去には見たことがないもので、どのようにしてできたのでしょうか。
- (1)大赤斑後方擾乱領域が大赤斑前方に波及した、
- (2)mid-SEB outbreakが大赤斑を超えて前方へ波及した、
- (3)大赤斑孔(GRS Hollow)内部の白雲が大赤斑前方へ噴出した、
などの可能性が考えられますが、まだ良く分かっていません。
ASTB白斑"BA"が大赤斑に接近中
1月初めごろから、赤味が増しているSTB白斑"BA"は、"Red Spot Jr."というニックネームが付いて、注目されています。今月もオレンジ色のドーナツ状のコアは健在です。このBAが大赤斑に接近していて(画像2)、7月10日頃に真南を通過します。5月下旬にはすでにBAの黒い縁取りの形に変化が見られます。直接にBAと大赤斑が衝突することはありませんが、大赤斑の南を通過することで渦の勢力が弱まり、逆にBAの赤味が消えるかもしれません。
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画像2 大赤斑に接近する赤いSTB白斑"BA" |
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ところでCCD画像では条件が悪くても赤く写るものの、眼視ではBAは赤く見えないようで、それだけコントラストが淡いのか、または眼視とCCDとの分光感度の差が出ているようです。
STBはBAから後方60度の経度でベルトとして見えていますが、その後方には60度の経度に渡って暗斑が連なっています。また、II=270°にはSTBの緯度に小さな暗斑がありますが、この暗斑は2002年に出現したもので、このタイプとしては比較的長命な暗斑です。
B大赤斑
大赤斑はII=112°に位置し、大赤斑の南半分は暗く縁取られています。全体はオレンジ色で、内部には大赤斑コアが見られます。大赤斑から前方のSTrZ(南熱帯)には、3月下旬から細いdark streakが30度ほど伸びており、II=80°には白斑があり、ゆっくりと後退しています。
CSSTB白斑
SSTBには全周で7個の小白斑が観測されていますが、BAAはこれらの白斑にA0からA6の名前を付けて追跡を行っています(画像3)。これらは高気圧性白斑ですが、A2-A3およびA4-A5の間には細長い白斑があります。これらは緯度もやや北に位置する低気圧性の循環気流の白斑です。同様の低気圧性白斑はA0の後方と、A5の後方でBAを通過した際に形成された白斑があります。
D黄濁したEZsと大きなfestoon
3月下旬頃から、SEBに隣接するEZs(赤道帯南組織)が黄色く濁ってきました。そのために条件が悪いと、SEBと一体となって幅広く見えたり、逆にSEBnが淡化している経度ではSEBが狭く見えたりします。
NEB南縁のEZnには、いつも青暗いfestoon(フェストーン)が見られますが、3月からfestoonが大きく成長しています。全周を約30度間隔で12本のfestoonが並び、大きな弧を描いて、EB(赤道紐)を形成しています。
ENEBとその北縁の白斑
NEB(北赤道縞)は比較的安定した幅の広いベルトです。NEB北縁には9個の白斑(ノッチ)がありますが、このうちのII=220°の白斑は'Z'と命名されている、1997年から継続している長寿命なものです。白斑'Z'は、この緯度の他の白斑よりも速く前進するために、ノッチやバージを追い越していきます。白斑'Z'が追い越すと、ノッチがいつの間にか消えていることが観測されていますが、その瞬間をとらえる機会はありませんでした。今回は、白斑'Z'の前方40度の範囲に2個のノッチがあり、もしかすると白斑がマージする現象が見られるかもしれません。
画像3 2006年4月5/7/8日の木星展開図(拡大) |
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