木星は11月22日に合を迎えました。12月中旬には新しいシーズンの観測が始まることでしょう。今月も2005-06年の木星面に見られた現象を解説します。
◆mid-SEB outbreak
SEB(南赤道縞)は木星面で最も目立つベルトです。観測シーズンが始まってまもなくの2005年12月18日UTに、永長英夫氏(兵庫県)はII=350°のSEB中央に1個の明るい白斑の出現を発見しました(画像1)。永長氏の精力的な追跡観測によって、12月23日および25日には白斑が2個に分離し、前方の白斑は北寄りで、さらにその前方に青黒い暗部が見つかりました。これはmid-SEB outbreak(SEB中央の白斑突発現象)の典型的な発生初期のパターンでした。
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画像1 mid-SEB outbr9eakの発見 |
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撮影/永長英夫(兵庫県、25cm反射)
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mid-SEB outbreakは、SEB南部の1つの発生源から次々と白斑が発生し、SEB北部を白斑が急速に前進し、SEBを白斑群で埋め尽くす現象です(画像2)。白斑と白斑の間は、青黒い暗部で区切られた独特のパターンを見ることができます。また、発生源と大赤斑との距離がoutbreakの規模と相関を持つことが知られています。大赤斑の後方100°以内で発生する小規模なoutbreakは、近年では2001年1月、2001年12月、2002年12月、2003年9月と毎年のように発生しています。大赤斑の後方200°を超えて発生する大規模なoutbreakは、1966年11月、1986年12月、1998年3月の3回しか起こっていません。今回のoutbreakは、大赤斑の後方242°で発生し、大規模な活動が予想されました。
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画像2 mid-SEB outbreakの分類 |
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大赤斑と発生源との距離によって活動の規模が分類される。
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画像3はほぼ1ヵ月毎のoutbreakの発達の様子を展開図で示し、画像4はSEBに見られた白斑のドリフトチャートを示します。12月に発生したoutbreakの白斑の前端部は、急速に前進を続け、2006年3月末には大赤斑後方擾乱領域の後方に達しました。両者の白斑は交じり合うように前進し、5月中旬にはoutbreakの白斑のみが残りました。このとき、後方から押し出された大赤斑後方擾乱領域の白斑は、大赤斑の前方に噴き出して、SEB北部の白斑として観測されました。過去の観測では、outbreakの白斑と大赤斑後方擾乱領域の白斑は決して交じり合わないものだっただけに、今回のこの現象には驚きました。
4月下旬にoutbreakの活動範囲は約160°と最大長になりましたが、5月に入るとoutbreakの後端部の前進速度が急に速くなり、その後は急速にoutbreakの活動は弱まってしまいました。8月末にはII=150°から前方30°の範囲に縮小し、どちらかというと定常的な大赤斑後方擾乱領域になってしまったと考えられます。
画像3 mid-SEB outbreakの発達 撮影/月惑星研究会(拡大) |
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画像4 mid-SEB outbreakのドリフトチャート |
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○印がmid-SEB outbreakの白斑、■印が大赤斑後方擾乱領域の白斑、▲印がSEB北部の白斑
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