月惑星研究会に逐次報告されてくる火星観測を点検しているうちに、11月25日にダストストームらしい現象が判明しました。前号で報告できなかったので、ここに記録しておきます。
今シーズンはクリセ(33W、+10)からクサンテ(52W、+13)付近にダストストームの発生が集中しています。今回も同じ部分で、日本からの観測条件は良好でした。しかし、目立っていたのは1日だけで、その後ゆっくり拡散し、淡いベール状になって広がりました。
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[図1] 11月25日のダストストーム |
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2007年11月25日 LS=353° 撮像:畑中昭利(三重、40cm) 左) 15:58UT CM=359° 右) 16:25UT CM=5° クリセとクサンテが明るくなっている。
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火星の全面に広がっていたダストの影響は次第になくなりつつあり、12月にはずいぶんよく見えるようになってきました。模様の見え方は、ダストベールのないときに近くなり、細かな変化もはっきりわかるようになってきています。模様が見やすくなると、局部的なダストベールの広がりも分かりやすくなっています。
視直径は15秒を越え、今シーズン最大の大きさになりました。望遠鏡で見ても大きくなり、観測の好機を迎えています。一方、日本は気流が悪く、思ったような成果を挙げることができませんでしたが、12月25日、26日には全国的に気流がよくなり、すばらしい観測が行われました。
Lsは12月の初めにほぼ0°になりました。0°は火星の北半球が春分になることを意味しています。このころは北極冠が最大になって見えるころで、火星の北の端にはいつも白い雲、あるいは北極冠が見えていました。北極冠ができたといっても、完全に晴れ渡り、きらきら輝く姿が見えているわけではありません。北極冠が出来上がっても、北極冠の上を覆う北極フードはまだ活発な姿をしているからです。月末になると次第に小さくなる様子が観測されました。
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[図2] 北極フードと北極冠 |
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左) 2007年12月13日 05:51UT LS=2° CM=51° 撮像:ドナルド・パーカー(米国、40cm) 右) 2007年12月29日 14:22UT LS=10° CM=35° 撮像:柚木健吉(大阪府、26cm) 左画像では北極フードが複雑だが、右画像ではフードがなく北極冠だけが見えている。
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アキダリウム(30W、+50)付近にはいつも白雲が広がり、しかも形がいろいろ変化し、興味深い姿を見せていました。
火星の大気は水蒸気の量が次第に多くなり、火星を望遠鏡で見ると縁には朝霧や夕霧などの雲が見え、美しい姿を見せるようになっています。とりわけタルシス(90W、+5)にある3つの大きな火山には白雲がかぶり、地上からの画像にはその様子がきれいに記録されます。しかし、オリンピア山にはなぜか白雲はまだ見えません。
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[図3] 2007年12月1日 04:33UT |
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LS=356° CM=138° 撮像:ドナルド・パーカー(米国、40cm) タルシス(Tharsis: 90W+5)の3つの火山の山岳雲が顕著
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一方、特徴的な姿として、低緯度地方を中心として、淡い白雲が東西に広がりつつあることも大きな特徴です。よく見ると、この三角形に見える白雲は、夜の側から日中の表面へと流れ込んでくる、熱潮汐の影響を受けたものだと考えられます。
また、最近は撮像技術も向上し、白雲の姿が鮮明に記録されるようになっていて、細いベルト状の雲が何度も記録されました。これは地球の前線と同じような働きをしているものと思われます。火星最接近の前日の12月18日(衝の7日前)に待望のブルークリアリングが、観測されました。何人かの報告がありましたが、風本氏がその様子をはっきりととらえています。
ブルークリアリングが出て、ソリス(90W、-25)やシレナム(160W、-30)が、普段は写らない波長ではっきりと記録されています。12月26日にはほとんど分からなくなり、1週間程度の期間だけしか見えなかったようです。ブルークリアリングは波長が450nmよりも短い青画像に地表の模様が写る現象で、火星の衝の前後に見られる興味深い現象です。今回もいつごろから見えるかが注目されましたが、ここにきてようやく見ることができました。
[図4] ブルークリアリング現象 2007年12月18日 13:50UT LS=4° CM=123° 撮像:風本明(京都府、31cm) 右端の画像で暗い部分はカラー画像と同じに形になっている。これがブルークリアリング現象。(拡大) |
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