合から2ヶ月が経過し、木星面の状況がわかるようになってきました。昨シーズン、循環気流で注目された2つの南熱帯攪乱(South Tropical Disturbance) (STrD-1、STrD-2)は確認されていませんが、代わってII=170°と240°にちょっと気になる大型の暗斑が出現しています。悪条件下の画像ではSTrZ(南熱帯)を横切る暗斑状に見えるので、当初はSTrD-1とSTrD-2かと思われたのですが、高解像度の画像により、STrZの孤立した暗斑であることがわかりました。どちらも中央が明るいリング状で、II=170°のものはメタンバンドの画像で明るく見えることから、高気圧的な循環を持つと考えられます。暗斑周囲のSTBnには循環気流を思わせるような模様はまったく見られません。暗斑は南熱帯攪乱の名残なのでしょうか。
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[図3] 2008年3月11日 21:11UT |
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I:23.4° II:207.9°撮像:阿久津富夫(フィリピン、35cm) 矢印の先にSTrZの暗斑が見られる。前方の暗斑近くのSTBにBA。
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SEB(南赤道縞)は明るいSEBZによって二条になっています。大赤斑後方では、II=210°付近までベルト北部に不規則な白斑群が見られるのですが、大赤斑後方の定常的な乱流活動(post-GRS disturbanace)が復活したのか、それとも昨年のSEB攪乱(SEB Revival)の名残なのか、注目されます。なお、3月8日に大赤斑前方で明るい白斑の出現が観測されました。その後、白斑は前方北側に向かって乱れた白雲領域を形成しつつあり、大赤斑前方では珍しい白雲のoutbreak活動であることが判明しました。
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[図4] 大赤斑前方に出現したSEBの白斑 |
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(左) 2008年3月8日 20:25UT I:242.2° II:89.8° 撮像:永長英夫(兵庫県、30cm) (右) 2008年3月13日 19:31UT I:278.4° II:88.0° 撮像:アンソニー・ウェズレー(オーストラリア、33cm)
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大赤斑は依然として赤みが強く、輪郭のはっきりした楕円暗斑です。経度はII=124.1°(3月15日、阿久津富夫氏)で、昨シーズン末とほとんど変化していません。近年続いていた後退運動はストップしたようです。後方のII=178.9(3月11日、阿久津富夫氏)のSTB(南温帯縞)にはBAがあります。相変わらず赤みはありますが、周囲の白い縁取りがなく不明瞭です。北半球ではNEB(北赤道縞)の北縁にバージ(暗斑)とノッチ(小白斑)が広範囲に発達しつつあります。NTB(北温帯縞)は久しぶりに北組織が出現して、幅広い二条のベルトとして見られます。南組織は赤みが強く直線的ですが、北組織は淡くグレーです。
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