大赤斑前方の南赤道縞(SEB)で発生した白雲の活動は、mid-SEB outbreakに特徴的な前方北側−後方南側に傾いた活動域を形成しています。mid-SEB outbreakの大部分は大赤斑後方で発生していて、前方で発生したのは、1998年など数例しかありません。活動域の先端は4月中旬にはII=0°付近に達していますが、明るい白斑は後端の発生源近くに見られるのみで、outbreakとしては小規模という印象を受けます。
この領域のすぐ南側のSEB南縁には、顕著な暗斑が観測されています。この暗斑は2月中旬に形成され、高解像度の画像では南熱帯(STrZ)に突き出した典型的なリング暗斑として見えています。第2系に対して+1°/dayのスピードで後退し、4月10日には赤斑湾(RS bay)の左肩に達しています。今後は過去の同種の暗斑のように、RS bayの縁に沿って大赤斑の周囲を回りながら取り込まれてしまうと予想されます。II=123.4°(4月11日)に位置する大赤斑は、昨年SEB攪乱南分枝の暗斑群によって淡化するはずでしたが、南熱帯攪乱(STrD)の循環気流によって暗斑群がUターンしたため、未だに顕著な状態を保っています。今回の暗斑の衝突で、何か変化が見られるか楽しみです。
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[図1] mid-SEB outbreakとSEBsの暗斑 |
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撮像:永長英夫(兵庫、30cm)、A. Wesley(オーストラリア、31cm)、F. Carvalho(ブラジル、25cm)、阿久津富夫(フィリピン、35cm)、J. Kazanas(オーストラリア、32cm)、C. Go(フィリピン、28cm)
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SEBは全周で二条ですが、ベルト内部はII=250°から前方でかなり乱れています。後端部には大型の明るい白斑があり、まるで別のoutbreakが起こっているかのようです。
STrDの名残ではないかと思われる2つの暗斑は、相変わらず顕著なリング暗斑として観測されています。経度は前方の暗斑がII=164.5°(4月4日)、後方のものがII=222.9°(4月9日)でした。どちらも-0.3〜-0.4°/dayというゆっくりとしたスピードで前進していますが、後方の暗斑の方がやや速く、両者の間隔は少し小さくなっています。
永続白斑BAはII=165.8°(4月11日)にあり、大赤斑に近づきつつあります。7月頃には大赤斑と2年ぶりに会合するはずです。後方の南温帯縞(STB)の暗部は昨シーズンよりも短くなり、長さ30°程度しかありません。その後方のII=210°付近の南温帯(STZ)には、この緯度としては珍しい、大型のリング暗斑が見られます。
赤道帯(EZ)は先シーズン著しく暗化し、南半分がベルトのようになりましたが、今シーズンは一転して明るくなっています。顕著なfestoonは少なくなり、赤道紐(EB)も淡く目立たなくなってしまいました。
北赤道縞(NEB)は北側が淡化して、ベルトが細くなっています。近年、NEBの太さは3〜4年おきに変化していますが、前回の拡幅現象は2004年でしたので、周期としては少し遅れ気味です。北縁にはバージ(暗斑)とノッチ(小白斑)が交互に並ぶ、この時期特有のパターンが発達しつつあり、バージがNEB北縁の突起として目立っています。なお、長命な白斑WSZはII=340°付近に観測されています。WSZは昨シーズンのNTBs outbreak発生後、II=60°付近で停滞していましたが、その後、再加速したようです。
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