細い環を見るなら年末年始!
明け方の東空には土星が姿を現しています。合からまだひと月ちょっとしか経っ
ていませんので、まだまだ条件は悪いのですが、観測できなかった3ヵ月の間に、
環がずいぶん細くなったことがわかります。来年は13年ぶりに環の消失現象が起
こりますので、このまま徐々に細くなって・・・、と思いがちですが、実際は
ちょっと違います。
|
[図3] 細くなった土星の環 2008年10月15日 20:42UT I=29.1° III=276.0° 撮像:熊森照明氏(大阪府、20cm) |
|
|
|
環の消失は、土星の環の平面が太陽を通過する時(環に光が当たらなくなる)と、
地球を通過する時(環が薄いので見えない)に起こります。後者は、土星と地球の
位置関係によって、1回起こる年と3回起こる年がありますし、両者の起こるタイ
ミングによって、太陽光の当たらない環の裏側を見ることができるケースがあり
ます。この場合、環は真っ暗にはならず、カシニの空隙や半透明なC環の部分が
明るく見えることが知られています。来年、環の平面が太陽を通過するのは8月
11日で、地球の通過は9月4日の1回だけです。ただし、土星は9月17日に太陽との
合を控えており、日没後のわずかな時間見えるだけなので、細い環の有無を確認
することは、困難と思われます。残念ながら、今回は極めて条件が悪いのです。
図4は、土星の環の傾きをグラフに表したもので、左下がりの真っ直ぐな線は、
太陽に対する環の傾きです。地球は環の平面に対して約27°傾いた軌道面を回っ
ていますので、サインカーブのような曲線を描きながら変化して行きます。今年
の秋から暮れにかけて、環の傾きは徐々に減少し、年末には-0.8°と極小になり
ます。しかし、その後はしだいに環が開いて行き、衝となる3月には-2.6°、5月
半ばには-4.1°と極大に達し、現在よりもむしろ傾きが大きくなってしまいます。
再び環の傾きが小さくなる夏場には、前述のように条件が悪くなってしまいます
ので、環の詳細を観察するには適さないでしょう。したがって、細くなった環を
観察するのは、今年の終わりから来年の初めにかけてが最適となります。
|
[図4] 土星の環の傾きの変化 地球に対する環の傾きは、2008年末に一旦、最小となる。 |
|
|
|
冬場はシーイングが悪く、惑星面の細部を観察するには向かないのですが、細く
なった環を見ることは十分に可能です。土星は西矩を過ぎたばかりで、夜半前に
東の空に昇ってきますので、年末年始は少し夜更かしをして、串団子のような土
星を堪能してはいかがでしょうか。
|