今年3月から続いていた大赤斑前方のmid-SEB outbreakの活動が、ついに停止し
ました。II=270〜20°の範囲で南赤道縞(SEB)内部に明帯が残っていますが、発
生源となる後端部分からの白雲の湧出は止まり、明帯内部の乱れは小さく、幅も
以前に比べて狭くなっています。9月に活動が停止したもうひとつのoutbreak領
域では、10月中旬にII=210°付近で2つの小白斑が出現しましたが、小規模なも
のなので、これまでの活動の名残ではないかと思われます。これで、今回の2つ
のmid-SEB outbreakの活動は終息したことになります。SEB内部には、まだかな
り濃淡があるものの、静かになったという印象を受けます。
これに対して北赤道縞(NEB)では、まだリフト活動が続いています。前観測期間
に見られた3つのリフト領域は、どれも長く伸びてしまい、個々の領域を区別す
るのは難しくなってしまいましたが、NEBはかなりの経度で二条になっていて、
ベルト内部には明るい白斑が見られ、南組織も変化に富んでいます。NEB北縁は
バージや突起模様で特徴づけられているものの、以前に比べると数が少なくなり、
現在では全周で5個を認めることができます。一方、北熱帯(NTrZ)の白斑は全部
で3個あり、このうち長命な白斑WSZはII=270°まで前進しています。
大赤斑は小赤斑(LRS)との会合によって赤斑孔へと変化し、現在もその状態が続
いています。内部には赤みのある大赤斑本体が見えているのですが、周囲の青黒
い取り巻きは大変強力で、衰える気配は見られません。前方のストリークは、
SEB南縁に沿って元々存在するストリークと一体化して区別できなくなっていま
す。II=350°までは連続したストリークになっていて、その前方は暗斑や断片と
なってII=260°付近まで続いているようです。
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[図1] BAと赤斑孔前方のストリーク 2008年10月17日 9:16UT I=129.6° II=79.3° 撮像:風本明氏(京都府、31cm) |
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今シーズン明化した赤道帯(EZ)は、相変わらず明るく、フェストゥーンなどの模
様はほとんど見られませんが、以前に比べると、青いフィラメント状の模様が増
えてきたように思われます。先月述べた北温帯縞北組織(NTBn)の青黒い乱れは、
II=160〜230°の範囲で、明瞭なベルト組織へと変化しています。さらに北側で
は、北北温帯縞(NNTB)が復活しつつあり、はっきりとしたベルトの断片が見られ
るようになっています。
STBsのジェットストリームの観測
近年の南温帯縞(STB)は、ほぼ全周で淡化して、細く淡い北組織だけになり、濃
いベルトとして見られるのは、永続白斑BAの後方に残るのみとなっています。こ
のSTB本体は、2004年頃には約100°の長さがありましたが、年々短縮する傾向に
あり、今年は25°くらいになってしまいました。さて、その後方にはSTB南縁
(STBs)の緯度に沿って、2003年頃から暗斑群が見られるようになっていて、まる
で崩壊しつつあるSTBの断片のような印象を受けます。今年も多数観測されてい
て、その最後尾に南温帯(STZ)の目玉状の大型暗斑が位置しています。
BAを含むSTB周辺の大部分の模様は、南温帯流というカレントに乗って、体系II
に対し約-0.5°/日の割合で前進しますが、STBsの暗斑群は、逆に経度増加方向
に後退運動をしていることがわかりました。これは、STBsを-20m/sで流れる西向
きのジェットストリームに運ばれているためです。このジェットストリームはボ
イジャーによって発見されたもので、それ以前には地上から観測されたことはあ
りませんでした。近年の暗斑群の活動によって、初めて捉えられるようになった
のです。今年の暗斑群のスピードは-10m/sと、やや遅いのですが、これは、ジェ
ットストリームの奔流から少し外れているためと思われます。
個々の暗斑を観察すると、STBの後端部分で生成された後、ジェットストリーム
の緯度を後退し、最後はSTZの目玉暗斑に衝突合体しています。目玉暗斑が顕著
な状態を保っているのは、暗斑群が「栄養源」となっているためかもしれません。
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[図2] 短縮するSTBと後方に続く暗斑群 上) 2006年5月21日 13:18UT I=351.8° II=174.6° 撮像:永長英夫氏(兵庫県、31cm) 下) 2008年7月10日 14:48UT I=182.9° II=166.0°撮像:熊森照明氏(大阪府、20cm) |
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[図3] STB南縁を後退する暗斑群 撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm)、永長英夫氏(兵庫県、30cm)、福井英人氏(静岡県、35cm) |
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