環の傾きは、12月上旬に-1°を割りました。年末には-0.8°と、この時期の極小
値となります。12月の環は直線状に細くなって、好条件の画像でも、カシニの空
隙を識別することができなくなっています。まさに串団子のような見え方です。
これから1月下旬までは、この状態をキープしますので、今シーズン前半の見ご
ろといえるでしょう。
土星本体では、白斑の発生が報告されています。12月7日のダミアンピーチ氏の
観測が最も早いようで、南熱帯(STrZ)に小白斑が捉えられています。10日には阿
久津氏と熊森氏が白斑の検出に成功しており、阿久津氏の測定では、白斑の位置
はIII=311°、南緯43°となっていて、今年前半に観測された長命な白斑と同じ
ような場所に出現しています。また、ピーチ氏は同じ日に南赤道縞(SEB)内部に
も白斑を捉えています。阿久津氏も13日にSEBの白斑を観測していますが、両者
の経度には隔たりがあるため、同じものではない思われます。
今シーズンも、土星面は活動的なようです。
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[図2] 土星の白斑 2008年12月10日 20:53UT I=156.3° III=326.5° 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) |
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第32回木星会議
毎年恒例となっている木星会議が、11月29・30日に開催されました。今年は小石
川正弘氏のお世話により、7月に新装オープンしたばかりの仙台市天文台を会場
として、北は北海道旭川から南は四国高松まで23名の木星観測者が集いました。
初日は、開会と自己紹介の後、天文台長の土佐誠氏による天体の磁場に関する講
演で会議の幕が開かれました。普段は木星面の模様を追いかけているため、多く
の参加者にとって馴染みの薄い分野でしたが、木星も強い磁場を持っていること
もあって関心は高く、多くの質問が寄せられていました。その後、今年の木星面
のまとめに入り、7月に見られた大赤斑と小赤斑(LRS)の会合現象を中心に、活発
な議論が交わされました。昨年は木星面全体で大きな変動が相次ぎましたので、
今年はその余波と見られる現象が多かったようです。夕方からは、新天文台の見
学と国内最大級となる口径1.3mの望遠鏡での木星などの観望を行いましたが、最
新の設備と技術の粋を集めた望遠鏡から、建設にあたられた小石川氏の執念がひ
しひしと感じられました。夜は、秋保温泉に場所を移して懇親会が開かれました。
長い木星会議の歴史の中でも、温泉宴会付きは初めてのことで、夜遅くまで話に
花が咲きました。
2日目は研究発表で、下記の4件の発表がありました。
1. 新仙台市天文台と惑星観測(小石川)
2. 木星の帯状流を測る・その1(堀川)
3. シーイングによる惑星像の歪み方の変化(三品)
4. 木星スケッチデジタル化計画のその後(田部)
最後のプログラムは、安達氏を座長とするパネルディスカッションで、「これか
らの惑星観測」をテーマに活発な議論が繰り広げられました。
次回の木星会議は来年9月頃に東京で開かれます。来年は月惑星研究会が創立50
周年を迎えるため、記念行事と合わせて盛大に行われる予定です。
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[図3] 仙台市天文台の1.3m望遠鏡と木星会議参加者 |
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