環の傾きは12月末に-0.8°まで小さくなり、今シーズン前半における極小となり
ました。土星をほぼ真横から見ることになるため、環は細い直線状で、まさに串
団子のような見え方です。環の内部の様子はまったくわかりませんが、好条件下
の画像ではカシニの空隙の位置がやや暗く、凹んだように見えています。数名の
観測者が指摘しているのですが、細い環は画像よりも眼視の方がシャープに見え
るようです。これは、土星本体よりも環の明るさがかなり暗いためではないかと
思われます。
今後、環の傾きはこれまでとは逆に徐々に開いて、5月には-4°に達します。環
の短径は土星本体の6分の1を超えますので、カシニの空隙などの環の内部構造も
わかるようになるでしょう。その後は、8月と9月に起こる環の消失に向かって、
急速に減少して行きます。
土星本体では、当観測期間も白斑の活動が観測されています。12月上旬に出現し
た南熱帯(STrZ)に小白斑は、その後観測がなく、一時的なものだったようですが、
南赤道縞(SEB)内部では頻繁に白斑が発生していて、12月20日と1月8日には阿久
津氏が、1月6日には柚木氏が撮像に成功しています。これらの白斑はどれもコン
トラストが低く、強調処理した画像でないと判別が困難です。さらに、1月6日に
熊森氏が北半球のEZ北部に白斑を捉えていて、翌7日のCasquinya氏と8日の阿久
津氏の画像でも明瞭です。北半球での白斑活動は、ここ数年で初めてのことです。
また、1月7日の熊森氏の画像では、I=300°付近の赤道帯(EZ)南部に暗斑が捉え
られています。暗斑はSEB北縁に接しており、10日のWesley氏の動画ではSEB北縁
に湾入を伴った横長の斑点で、後方に薄暗い暗条が伸びているのがわかります。
近年の土星面の活動は白斑ばかりで、暗斑はほとんど観測されていなかったので、
注目されます。
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[図2] 土星の白斑 2009年1月8日 19:32UT I=115.6° III=35.9° 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) SEB内部とEZ北部に白斑が見られる(矢印)。 |
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[図3] タイタンの経過とEZ南部の暗斑 2009年1月7日 18:08UT I=301.6° III=257.3° 撮像:熊森照明氏(大阪府、20cm) |
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環の傾きがゼロに近くなったため、衛星本体やその影が土星面を経過する現象が
頻繁に起こっています。当観測期間でも、ディオーネ、テティス、タイタンやそ
の影が土星面を通過する様子が捉えられています。ディオーネなどの小さな衛星
の経過は、大きな望遠鏡でないと難しいと思われますが、タイタンは、木星のガ
リレオ衛星並みに大きな黒い斑点として見えますので、小望遠鏡でも十分に楽し
むことができるでしょう。
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