12月末に極小となった環の傾きは、徐々に開きつつあり、2月半ばには-1.8°と
なりました。環の短径は1.4秒まで大きくなり、見かけの形状も細い線状から、
再び南北方向のふくらみがわかるようになっています。解像度の高い画像では、
本体の東西に環の内側の空間が細く見えていますし、カシニの空隙もかなりはっ
きりとしてきました。
土星本体では、今月も頻繁に白斑や暗斑が観測されています。1月初めに出現し
た赤道帯(EZ)北部の小白斑は、当観測期間も明瞭で、1月23日の阿久津氏とGo氏
の画像に、2月10日の熊森氏の画像で確認することができます。白斑は比較的輝
度があり、環の影のすぐ北側に貼りつくように位置していて、経度は23日にI=
100°、10日にI=125°付近と後退傾向を示しています。1月初めの出現時は、I=
85°付近にありましたから、ひと月で約40°後退したことになり、移動速度は
+1°/dayを超えます。
もうひとつ気になる模様のEZ南部の暗斑ですが、こちらも当観測期間に何度か観
測されています。ただし、観測される経度は大きくバラついていて、1月23日に
阿久津氏とGo氏が捉えたものはI=120°付近、2月2日に柚木氏が観測したものは
I=255°付近、さらにGo氏は10日にも撮像に成功しており、経度はI=305°付近で
した。形状はどれも横に伸びた暗斑で、高解像度の画像では、木星のフェストゥ
ーン(festoon)のように、EZ中央に向かって細く条が伸びているように見えるも
のもあります。ひとつの模様としては、経度変化量が大きすぎるので、同じよう
な模様が複数存在するのかもしれません。ところが、これらをIII系で換算する
と、2日の柚木氏によるものを除き、どれも265°前後となります。1月7日に熊森
氏が最初に観測した暗斑も、III系では260°くらいになりますので、この暗斑は
EZにありながら、III系に乗っている珍しい模様という可能性もあります。今後
の観測で明らかにしたいものです。
|
[図1] 土星面を経過中のタイタンとEZの白斑と暗斑 2009年1月23日 17:27UT I=107.9° III=248.5° 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) |
|
|
|
今シーズンは、衛星現象が度々観測されていますが、当観測期間もタイタンの土
星面経過が、1月23日と2月8日の2回起こりました。このうち、2月8日のGo氏の画
像では、タイタンが土星の縁から離出する様子が捉えられています。面白いこと
に、土星の周辺減光中のタイタンがドーナツ状に見えます。時期的に考えて、タ
イタン本体と影が重なっているわけではないようです。ガリレオ衛星などは、木
星の周辺部では明るい輝点となりますが、タイタンは濃い大気のせいで、タイタ
ン自身に強い周辺減光が生じているためと推察されます。また、1月23日の阿久
津氏の画像を見ると、メタンバンドの画像に経過中のはずのタイタンが写ってい
ません。これは、タイタンがメタンを含む大気を持っているために、メタンバン
ドの波長が吸収されてしまうためであると、阿久津氏が指摘しています。メタン
画像で輝いて見えるガリレオ衛星とは対照的です。
|
[図2] タイタンの離出 2009年2月8日 撮像:Christopher Go氏(フィリピン、28cm) 左の画像で周辺減光中のタイタンがリング状に見えるのに注目。 |
|
|
|
|