観測数が増えるにつれて、木星面の詳しい状況がわかるようになってきました。
ただ、国内の観測条件はまだまだなので、多くは海外の観測者に頼らなければな
りません。
今シーズンの木星面で目につくのは南赤道縞(SEB)の変化で、全周で二条に分離
し、間には明るく幅広い明帯(SEBZ)が発達しています。昨年の見られたmid-SEB
outbreakによる乱れた白雲領域とは異なり、SEBZは静かなゾーンで、微細構造が
少なく明暗もほとんどありません。特に大赤斑前方では幅広く単調で、SEB南縁
には凹凸がほとんどなく平坦です。大赤斑後方は、やや乱れて白斑などが散見さ
れますが、激しい活動ではないようです。このようなベルトの様相は、2000年頃
とよく似ています。
大赤斑は、やや淡く赤みも弱いものの明瞭です。経度はII=133.1°(4月15日)で、
昨シーズン末とほとんど変化ありません。永続白斑BAは4月2日でII=357.1°にあ
ります。後方に続く南温帯縞(STB)の断片は縮小して、小さな暗斑のようになっ
てしまいました。昨年顕著だった南温帯(STZ)の大型リング暗斑が、BAに約20°
まで接近しています。6月か7月にはBAにかなり接近することが予想され、ひょっ
とすると衝突・合体するかもしれません。昨年の大赤斑と小赤斑(LRS)の会合の
ように、注目されることでしょう。STBでは、他にII=245.7°(4月11日)にある横
長の暗斑が目に留まります。これは昨シーズン、大赤斑の前方に見られた孤立し
た小暗斑が発達したもののようです。また、大赤斑の南から前方にかけては、
STB remnantと呼ばれる青いフィラメント状の模様が見られます。
STBの南側の南南温帯縞(SSTB)は、大赤斑の後方で大きく二条に分離しています。
北側の組織は全周で明瞭ですが、南側の組織はII=250°付近で途切れています。
昨年、A0からA8まであった高気圧性の小白斑は、8個が確認されており、A7だけ
が行方不明です。
北赤道縞(NEB)は今年も活動的なようで、リフト領域が出現しています。今回の
活動は3月末に始まったようで、28日のSalway氏(オーストラリア)の画像でII=
330°付近に初期の白雲が見られます。4月11日にはかなり発達し、II=280°付近
に長さ30°ほどの傾いた明部が形成されています。ベルトの北縁にはバージ
(berge)による凹凸がいくつか見られます。長命な白斑WSZはII=207.4°(4月8日)
に位置していますが、明るい北熱帯(NTrZ)に埋もれてわかりにくくなっています。
北温帯縞(NTB)は、今年も二条に分離し、南組織(NTBs)は赤みが強く直線的です。
一方、ベルト北部では青黒い不規則な暗部が増え、暗斑の連鎖のような北組織
(NTBn)を形成しています。特にII=290〜20°では、NTBnが湾曲して北へ張り出し、
北温帯(NTZ)が薄暗くなっています。この両端部分は凹面状にくぼんで、南熱帯
攪乱(STrD)とよく似た形になっていて注目されます。
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[図2] 今シーズンの木星 左) 2009年4月2日 20:53UT I:247.9° II:359.5° 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) 右) 2009年4月15日 20:50UT I:137.5° II:150.0°撮像:Christopher Go氏(フィリピン、28cm) |
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