木星面は、前観測期間と比べて大きな変化は見られません。南赤道縞(SEB)は全
周で二条に分離しています。中央の明るい帯(SEBZ)は、大赤斑(RS)の前方では明
るく明瞭ですが、II=200°台では薄暗くなって目立ちません。大赤斑の後方では、
乱れた白雲が時々現れ、定常的な活動領域(post-GRS disturbance)が再び形成さ
れる気配が感じられます。
大赤斑は楕円形の輪郭こそはっきりしていますが、赤みがほとんどありません。
普段は赤色光の画像では明るく、青色光の画像では暗く写るのですが、現在はあ
まり濃度差が見られません。これほど赤みのない大赤斑は、赤斑孔(RS Hollow)
となっていた時期を除けば、かなり珍しいのではないでしょうか。経度は5月4日
にII=135.2°で、ゆっくりとした後退運動を続けています。
永続白斑BAはII=344.7°(5月8日)に進んでいます。大きいわりに明るさがないた
め、南温帯縞(STB)のギャップ(gap)のように見えます。BAとの衝突が期待されて
いる南温帯(STZ)のリング暗斑は、BAの後方15°に迫っていますが、4月末に周囲
の暗い取り巻き部分が消失して、小白斑に変化してしまい、高解像度の画像でな
いと、明瞭に捉えるのが難しくなってます。おそらく、これがリング暗斑の元の
姿なのではないかと思われます。
北赤道縞(NEB)ではリフト(rift)活動が活発になり、全周で3つのリフト領域が認
められます。このうち2つは4月後半に新たに形成されたもので、ひとつは4月23
日頃にII=170°付近で、もうひとつは4月末にII=70°付近で活動が始まりました。
どちらもNEB内部にあった小白斑から白雲が東西に広がることでリフト領域に変
化しています。両者とも体系IIに対して1日当り-3.5〜4°のスピードで前進して
おり、5月12日にはそれぞれII=10°と100°前後で、長さ30〜40°のリフト領域
が見られます。3月に活動が始まったリフト領域も健在ですが、長く伸びた領域
の前半部分は衰退し、後半分がII=200°付近で長さ40°くらいの明部として残っ
ています。
NEB北縁では、大赤斑の北側に当るII=140°付近に大きな暗斑が出現しています。
茶色の色調や周囲のNEB北縁が湾状に凹んでいる様子から、小赤斑(LRS)が形成さ
れた可能性があります。もし、そうであれば、NEB北縁では10年ぶりの出現とな
ります。
北温帯縞北組織(NTBn)の青黒い暗部は相変わらず顕著で、II=110°付近には長さ
30°のストリークがあります。また、II=0°前後では、数十度に渡ってNTBnの暗
部が北温帯(NTZ)を侵食し、攪乱状に乱れています。
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[図1] 木星面の全面展開図 5月9日〜13日の画像から永長英夫氏(兵庫県)が作成したものを改編。 |
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