5月末に顕著な暗斑が出現した北赤道縞(NEB)北縁では、ベルトが北側へ幅広くな
る、拡幅領域が形成されています。2004年以来、5年ぶりの発生です。最初、II=
137.0°にあった暗斑は、北熱帯(NTrZ)の孤立した暗斑となって前進し、6月20日
頃にはII=105°付近に達しました。そして、後方ではNTrZに向かって腕のように
伸びたNEBの先端から新たな暗斑が放出され、NEB拡幅初期に特徴的な様相となり
ました。このまま暗斑の前進と共に、拡幅域が拡大して行くと期待されたのです
が、先頭の暗斑は意外にも後退運動に転じ、6月末には後続の暗斑と衝突・合体
してしまいました。そのため、拡幅領域は7月に入っても、II=105〜140°の範囲
に止まっています。この領域の後方II=170°にはNTrZの長命な白斑WSZが迫って
いますので、今後、何らかの相互作用が見られるものと思われます。
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[図1] 大赤斑と拡幅中のNEB 撮像:Fabio Carvalho氏(ブラジル、25cm反射) |
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NEBで見られる3つのリフト領域では、最初に活動が始まったR1が最も活動的で、
長さ100°を超える長大なリフト領域に成長しました。内部には明るい白斑がい
くつか見られ、乱れた白雲はベルト北縁まで広がっています。他の2つのリフト
領域(R2、R3)はどちらもやや衰えて、白雲活動はベルトの南半分でしか見られま
せん。
南赤道縞(SEB)は相変わらず全周で二条になっています。中央の明るい帯(SEBZ)
はやや薄暗く、青みのある微細模様が増えましたが、ベルト全体が静かで、全周
で一様な見え方になっています。そのため、英国天文協会(BAA)のロジャース氏
らは、近いうちにSEBが再び淡化すると予想しています。
大赤斑は輪郭が明瞭で赤みも取り戻しましたが、やや小さくなったようで、丸み
が増して見えます。当観測期間における平均長径は15.9°で、この数年間の平均
よりも1°以上小さくなっています。経度は7月9日でII=136.2°と、少し後退し
ました。永続白斑BAはII=320.9°(7月5日)に大きな白斑として見られます。中心
に白い核がありますが、白斑自体は赤みもなく濁っていて、周囲とのコントラス
トが低く、あまり目立ちません。後方には南温帯(STZ)の小白斑が見られますが、
間にある南温帯縞(STB)の名残の暗斑に行く手を阻まれて、BAとの距離は変わっ
ていません。II=200〜260°には、STBの新しい暗部があります。後方ほど緯度が
高く、右上がりの見え方ですが、南南温帯縞(SSTB)とは融合していません。
北温帯縞(NTB)は顕著なベルトとして見えていますが、その北はコントラストが
低く、目立つ模様はありません。NTB北組織(NTBn)には青く乱れた暗部がいくつ
も見られ、II=340〜80°では北北温帯縞(NNTB)と融合しています。
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[図2] 木星面展開図 (2009年6月25〜26日) 永長英夫氏(兵庫県、30cm反射)が撮像・作成したものを筆者改編 |
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