出現から3ヵ月近く経過し、南極地方(SPR)の衝突痕は、拡散が進んでほとんど見
えなくなっています。高解像度の画像では、大赤斑後方のSPR北縁に乱れや明暗
が残っていますが、通常の条件下ではほとんど見ることができません。東西のリ
ム近くにある時だけ、暗い帯として認められるだけとなっています。
北赤道縞(NEB)では、9月に入ってII=200°台でもベルト北縁に沿って暗斑が数多
く出現し、拡幅活動は全周に波及しつつあります。6月と8月に始まった2つの領
域の拡幅活動では、北緯20°付近に新しい北縁が形成され、暗斑などの模様は幅
広くなったベルト内部に埋もれて、激しい活動は概ね一段落したように見えます。
NEB北縁での激しい活動は、10月前半にはII=200°台へと移ってしまいました。
NEB内部のリフト活動は、最初に形成されたR1が健在で、明るい白斑は少なくなっ
たものの、II=30°付近を中心に、長さ100°を超える長大な明帯として観測され
ています。
南赤道縞(SEB)は徐々に淡化しつつありますが、進行は極めてゆっくりで、ベル
トの様相は前観測期間とほとんど変化していません。それでもフランスのペリエ
氏の組画像で見ると、9月のSEBは6〜7月より明らかに淡く、南組織(SEBs)と大赤
斑の濃度関係が逆転して、大赤斑の方が明瞭になっているのがわかります。また、
大赤斑後方ではベルトが淡化するに従い、バージ状の暗斑が増え、顕著になって
きました。特に大赤斑の直ぐ後ろにあるバージは、著しく濃くなっています。
大赤斑はII=141.0°(10月12日)にあり、以前に比べて赤みが増してきました。10
月には大赤斑湾(RS bay)の北縁に、明るい小白斑が出現して注目されています。
12日の熊森氏の画像では、RS bayの中央やや前方寄りに核状に明るい小白斑とし
て捉えられており、同日の柚木氏によるメタン画像でも明るく見られます。伊賀
氏の解析によると、この付近は9月末から明るくなり、10月7日以降、目立つよう
になっています。RS bayはしばしば一部が切れて、南赤道縞帯(SEBZ)に白雲が流
れ込むことがありますが、今回のような白斑は過去に例がありません。
永続白斑BAは、II=300°付近にある南温帯縞(STB)の暗斑の直ぐ前方にあります。
高解像度の画像でこそ楕円形の輪郭と内部の赤みのあるリング構造が明瞭ですが、
明るさがまったくないため、中程度の条件下では存在を認めることすら難しくな
っています。いくつかの画像では、周囲よりも薄暗い「暗斑」として捉えられて
います。
北温帯縞(NTB)はII=0〜100°の間で北縁が暗くなっています。II=200°台には顕
著な棒状の暗部が2つ存在していましたが、前方のものが9月後半以降、細長くな
って淡化してしまいました。
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[図1] 最近の木星面 左) 大赤斑の左下に出現した小白斑 撮像:熊森照明氏(大阪府、20cm反射) 右) 周囲より暗く見える永続白斑BA 撮像:林敏夫氏(京都府、35cmSCT) |
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