本格的な観測シーズンを迎え、多くの観測報告が集まりました。欠測は1日だけ
で、日本と海外が半々くらいの数です。火星の自転は約24時間半と地球に近いの
で、海外の観測があると日本とは異なる経度の様子を知ることができ、大変重要
な記録となります。
北極冠がはっきりした姿を見せるようになりました。大きく広がった縁の部分は
白く輝いていますが、北極点付近は逆に少し薄暗く見えます。最近は、そのよう
な極冠の様子をパソコンで処理し、北極を中心とした展開図にして、ドーナツ状
に明るい北極周辺の状況を報告してくれる観測者もいます(図1、3)。
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[図1] 北極冠の様子 極冠の周縁部が明るく中央が暗い。撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
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[図3] 極方向から見た北極冠 北極冠がドーナツ状になっている様子が良くわかる。 撮像:ジョージ・ターソウディス氏(ギリシャ、25cm) |
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視直径はついに10秒を超えて、火星面の状況が捉えやすくなり、海外から条件の
良い画像も届いているので、主な暗色模様はすべて確認できています。前回の接
近時と比べて大きな変化は見られません。また、ダストストームも当観測期間は
捉えらませんでした。
低緯度地方では、東西に広がる氷晶雲が観測されています(図2)。非常にデリケ
ートな模様なので、印刷ではうまく再現できていないかもしれませんが、火星像
の欠け際の北(画像の真下)から3分の2あたりが、幅広く明るくなっています。カ
ラー画像では、他の領域に比べてやや白っぽく見えるので、区別できます。観測
者によっても画像の処理が異なるため、よく再現できている画像と、そうでない
ものがあり、判断の難しいケースが多くありました。
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[図2] 低緯度地方の氷晶雲 撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) |
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北極冠は11月の初めまで広い範囲で淡いフードに覆われていましたが、次第に晴
れて11月末には、はっきりした姿を見せるようになりました。北極冠の周縁は暗
いバンドに取り巻かれており、画像でも眼視でも暗いベルトが良く目立っていま
す。
図2の左上の明るいところは、アルギレ(35W, -50)と呼ばれる大きな盆地で、一
面に白雲か霜が広がっています。ここでは1画像しか掲載できませんでしたが、
阿久津氏のオリジナルの画像では、明るい白雲が自転に伴って移動する様子が記
録されていました。
また、タルシス(90W, +5)にある火山群の頂き付近には山岳雲が発生しており、
欠け際近くになる(火星の夕方になる)と、白雲が白斑のように明るく記録される
ようになりました。
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