火星の季節を表すLsは、3月10日に62°となり、北半球は夏至に向かっています。
北極冠は縮小しつつあり、あちこちで白雲が目立ちます。視直径も11秒と小さく
なったので、気流が悪いと北極冠が見辛くなりました。
北極冠からの冷気の噴出し
当観測期間も「北極冠エッジダストストーム」が見られました。今回は2月16日
に、エリシウム(215W, +23)の北側で発生しましたが、残念なことに日本からは
見えない経度でした(図1左)。発見時は非常に小さく、条件が整わないと眼視で
は見えませんでしたが、翌17日には、北極地方の気流に乗って東へ約10°移動し、
広がっています(図1右)。19日にはシャープ(Ian Sharp)氏が、やはり東にずれな
がら発達しているダストストームの姿を記録しています。
画像を精査すると、W70°にも北極冠から白く明るい突起状の模様が見られます。
一見すると北極冠エッジダストストームのようですが、これは地形によるもので
す。北極冠はこの経度の方向に深い谷があり、この谷の西側の先端が明るく見え
るために起こります。しばしば見られるので、気をつけないと見誤まる可能性が
あります。
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[図1] 北極冠エッジダストストーム 左) 北極冠から中央に向かって伸びる白い突起がダストストーム。 撮像:エミル・クラーイカンプ氏(オランダ、25cm) 右) 翌日の画像、幅は広くなり、位置も東にずれている。 撮像:ダミアン・ピーチ氏(イギリス、35cm) |
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ダストのベールか?
2月28日、イスメニウス(333W, +41)北方で、北極冠の輪郭が不明瞭になっていま
した(図2)。ダストストームと同じ緯度に当たります。北極冠の周縁がかすんで
見えるのは、エッジダストストームが起き、ダストのベールができたのではない
かと考えられます。
また、北極冠はしばしば黄色みを帯びます。これも同じような原因でダストが舞
い上がり、かすんだ状態になるものと思われます。
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[図2] 北極冠を覆うベール 北極冠の周囲がダストストームのベールをかぶったように見える。 撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
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山岳雲
当観測期間も山岳雲が良く見られました。正午を回ると自転につれて白く明るく
なるのが特徴です。以前はスポット状のものが多かったのですが、北極冠の縮小
と共に雲の面積が広くなり、広範囲に見えるようになっています。アルバのよう
な面積の広い火山にも雲が広がり、青画像では火星面がにぎやかです(図3)。
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[図3] 火星の山岳雲 3つ並んだ中央の雲がアルバの雲。 撮像:阿久津弘明氏(北海道、28cm) |
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氷晶雲
氷の結晶でできた雲が赤道付近で幅広く伸び、まるで火星の腹巻のように見えて
いて、特に青画像で明瞭です(図4)。以前はクリセやリビヤなど、火星の低地に
できやすかったのですが、最近は活発になって全周を取り巻いています。
山岳雲も氷晶雲も青画像で明瞭ですが、450nm以下の波長でないと地表の模様が
写り、好ましくありません。フィルターを使う場合は、こういった条件を整えた
いものです。
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[図4] 腹巻状に広がる氷晶雲 385〜450nmの波長で撮った火星面、東西に白雲の帯が見える。 撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
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