火星の季節を表すLsは、4月10日の時点で75°となりました。当観測期間は大き
な現象は起こらなかったものの、雲があちらこちらに見られました。
雲は北極冠の周囲、成層火山周辺、大きな盆地であるヘラスやアルギレベイズン
で観測されました。北極冠では、夜明け直後のリムに常に白雲が見られ、極冠の
端がどこにあるのかよく分かりません。眼視でもよく見ることができました。夜
明け直後は暗い斑点状に見えているタルシス・オリンピア・アルバ・エリシウム
の6火山は、火星の正午を過ぎる頃から白雲を作り、日没直前には眼視でも顕著
です。ヘラスとアルギレベイズンは、どちらも火星の位相の関係で、夜明け直後
の状態が短時間見えるだけでした。ヘラスは常に南半分、アルギレは全体が明る
い白雲(おそらく霧)で覆われていました。
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[図1] リム付近の成層火山による雲 撮像:エフライン・モラレス・リベラ氏(プエルトリコ、20cm) |
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当観測期間で目についたのは、赤道を付近にできる氷晶雲で、青画像で火星を撮
像すると顕著に見られます。氷晶雲は、文字通り水の氷の雲です。雲の高さはそ
れほど高くなく、図2左のように、タルシス3山(90W, +5)やオリンピア山は覆わ
れることはありません。氷晶雲は眼視では見るのが難しいため、画像の独断場で
す。それでも大きい口径では、濃い青フィルターをかけると眼視でも見ることが
できます。氷晶雲は図2左のような明瞭なベルト状のものばかりではなく、図2右
のように断片的になっていることもあります。
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[図2] 赤道付近に広がる氷晶雲 氷晶雲は450nm以下の波長でないと写らない。低位緯度地方にもやもやと広がっている。 左) 撮像:ダミアン・ピーチ氏(イギリス、35cm) 右) 撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
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北極冠エッジダストストームが頻繁に発生する時期になると、北極冠周辺では乱
流が発生するらしく、極冠がしばしば黄色く観測されます。昔から小さくなった
北極冠は黄色っぽいとよく言われていましたが、今シーズンも黄色っぽくなり、
3月20日ごろが最も顕著でした。
北極冠が縮小するにつれ、その周囲の地域が際立って暗くなっています。特に大
シルチス前後の経度では、極冠をかなりの幅で取り巻いています(図3)。元々、
北極冠の周縁にはかなり暗い領域が存在しますが、それよりもはるかに幅の広い
バンドができています。
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[図3] 北極冠を取り巻く暗帯 撮像:米山誠一氏(神奈川県、25cm) |
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