5月に入り木星面全周の様子がつかめるようになりましたが、警戒されている南
赤道縞攪乱(SEB Disturbance)は、まだ発生していません。ひと安心です。昨シ
ーズン末の南赤道縞(SEB)は北組織(SEBn)が濃く残っていましたが、現在では南
北両組織とも淡くなっています。SEBnの方がやや明瞭で、条件が悪いと灰色の薄
暗い帯として見られ、南組織(SEBs)は極めて淡くなったものの赤みが残り、色調
の差で識別することができます。
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[図1] この1年間における木星面の変化 SEBが淡化しNEBが幅広くなった、大赤斑の濃度と赤みの変化にも注目。 2画像をベルトの位置や太さがわかりやすいように合成した。 撮像:クリストファー・ゴー氏 (フィリピン、28cm) |
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大赤斑(GRS)は周囲に暗い模様がなくなって、広大な明るい領域に浮かぶ赤色斑
点として大変顕著です。画像で見ると北赤道縞(NEB)に匹敵する濃さですが、眼
視では赤みはあるものの、それほど濃く感じられません。昔から大赤斑は濃くな
ると経度増加方向への動きが強まると言われていますが、それを裏付けるかのよ
うに昨年末よりも5°前後も後退して、II=150°近くに達しています。大赤斑の
前側には、昨年秋に話題になった赤斑湾(RS bay)の前端部分が青い突起として見
られます。大赤斑の後方20°には昨年顕著だったSEBsのバージ(barge)が残って
いますが、淡化が進んで消失しかかっています。
NEBは拡幅活動が完了し、ベルトが幅広く赤みが強くなっています。ベルト内部
には長さ数十度のリフト領域が数ヵ所で見られ、活動的です。II=110°付近の
NEB北縁に見られる明瞭な白斑は、1997年から12年以上も存在し続けているWSZと
呼ばれる長命な高気圧的白斑で、昨シーズンは北熱帯(NTrZ)に露出していました
が、今シーズンはNEBに半分埋もれたノッチ(notch)状に見えています。赤道帯
(EZ)は相変わらず明るく、フェストゥーン(festoon)はほとんどありません。解
像度の高い画像では、青く乱れたフィラメント模様で満たされています。
南半球で最も目立つベルトは南南温帯縞(SSTB)で、濃淡に富んでいます。ベルト
内部には、今シーズンも8個の高気圧的小白斑(AWO)が確認できます。南温帯縞
(STB)はII=20〜70°の範囲で不規則なベルトの断片が存在し、他は北組織(STBn)
が残るだけですが、今シーズンは比較的明瞭です。永続白斑BAの赤みが数年ぶり
に強くなっています。BA直後の暗斑は消失してしまい、高解像度の画像で見るBA
は孤立した赤い「暗斑」です。経度はII=200°付近と大赤斑に近づきつつあり、
後方には南熱帯(STZ)の小白斑が健在です。
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[図2] 赤い「暗斑」になったBA 撮像:阿久津富夫氏 (フィリピン、35cm) |
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NEBの北側では、北温帯縞(NTB)が濃く明瞭で、北北温帯縞(NNTB)は濃淡が多く乱
れています。その間の北温帯(NTZ)はやや薄暗く、昨シーズンの活動の名残と思
われる暗斑や暗い領域が残っています。
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