※小天体の衝突!
6月3日20時31分(UT)、オーストラリアのアンソニー・ウェズレー氏(Anthony
Wesley)は、撮像観測中、淡化した南赤道縞(SEB)の南部に突然輝点が出現し、数
秒間輝いた後、消えるのを捉えました。その後、フィリピンのクリストファー・
ゴー氏もこの輝点を観測していることがわかり、小さな天体が木星に衝突した瞬
間を捉えた現象であることが明らかになりました。
小天体の衝突現象は、昨年7月の衝突痕出現に続き3度目です。過去の例では、天
体が木星に衝突する瞬間は観測されていないので、今回はその現場を捉えた史上
初めての観測となりました。ウェズレー氏は、前回の衝突痕の発見者でもあり、
大変な強運の持ち主と言えるでしょう。
衝突場所では、過去の例のように真っ黒な衝突痕の出現が期待されましたが、予
想に反して何の痕跡も検出されませんでした。衝突天体は極めて小さく、木星の
雲頂に到達する前に燃え尽きてしまったものと思われます。
それにしても、2年続けて衝突現象が観測されるとは驚きです。木星への小天体
の衝突は、我々が考えるよりずっと頻繁に起こっているのかもしれませんね。
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[図1] 木星に小天体が衝突した瞬間 撮像:アンソニー・ウェズレー氏 (オーストラリア、33cm) |
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※木星面の状況
木星面は全体として、先月号でレポートした状況とほとんど変化していません。
SEBは今も淡化が進んでいるようで、ベルト本体はゾーンのように明るく、北組
織(SEBn)が淡いグレーのラインとして残るだけです。それでも、南熱帯(STrZ)と
比較すると、SEB内部には青い微細模様が広がって、やや薄暗く感じられます。
また、痕跡状に残る南組織(SEBs)は赤みがあるため、STrZとの境界線となってい
ます。
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[図2] 6月2日〜4日における木星面展開図 永長英夫氏(兵庫県、30cm)が撮像・作成したものを筆者改編。 |
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大赤斑(RS)は赤茶色で、周囲に暗い模様がなくなったため、著しく目立つ存在と
なっています。おそらく、前回濃化した2007年を上回り、最近20年間で最も濃い
のではないかと思われます。シーイングが良ければ、小口径でも楽に認めること
ができるでしょう。経度はII=149.8°(11日)で、前観測期間と変化ありません。
大赤斑の後方から永続白斑BAが近づきつつあります。赤みが強く、周囲に暗い模
様がないため、眼視でも薄暗い暗斑として認めることができます。6月11日でII=
186.9°にあり、1日に約-0.4°の割合で前進しており、9月頃には2年ぶりに大赤
斑の南に到達します。ちょうど赤色ダルマのような見え方になるのではないかと
期待されます。
SEBの淡化により木星面で目立つベルトは北赤道縞(NEB)の1本だけとなっていま
す。ベルトが幅広く赤みを帯びているのは、昨年の拡幅活動の余波です。リフト
活動によってベルトが二条に見える経度もありますが、それほど激しいものでは
ないようです。NEB南縁(NEBs edge)から赤道帯(EZ)へ伸びるフェストゥーン
(festoon)は、まったくと言っていいほど見られません。拡幅活動で北側へ広が
ったNEBの北縁(NEBn edge)はほぼ平坦ですが、II=240°付近でやや乱れています。
長命な高気圧的白斑であるWSZはII=110.4°(4日)にあり、大変明るく顕著です。
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