※BAと小白斑の合体
合体が予想されていた、永続白斑BAと南温帯(STZ)の小白斑が、ついに合体しま
した。STZの白斑は2004年末からBAの後方で観測されていて、小さく目立たない
存在ながら、その形や運動で話題となってきました。特に、2008年には白斑の周
囲に暗い取り巻きが発達し、まるで大きな目玉のような暗斑となって注目されま
した。昨年からBAとの合体が噂されるようになりましたが、両者の間には、南温
帯縞(STB)の暗斑(BA後方に伸びていたSTBの一部が短縮したもの)が障害物となっ
て、暗斑を挟んで左にBA、右に白斑という様相が続いていました。
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[図1] BAと小白斑の合体 上) 合体前:BA後方に白斑が見える。撮像:阿久津富夫氏(フィリピン、35cm) 中央) 合体直後:赤いBAが白いリングで囲まれている。後方には白斑が出現。撮像:ドナルド・パーカー氏(米国、35cm) 下) 合体後:BA後方にSTB remnantが濃化している。撮像:ファビオ・カルバロ氏(ブラジル、35cm) |
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今回の合体現象については、英国天文協会(BAA)のロジャース(John Rogers)氏が
詳細なレポートにまとめています。それによると、障害物となっていたSTBの暗
斑が5月に消失した後、小白斑は後方から追いついてきた、STBレムナント(STB
remnant)と呼ばれる青みを帯びた低気圧性の領域に押されて急速に前進、6月17
日にBAに到達して、変形しながらBAの南縁に沿って回り始めました。合体は極め
て素早く進んだようで、2日後の19日には、赤いBAを白いリングが縁取っている
様子が捉えられています。合体の過程について、ロジャース氏は2008年に観測さ
れた大赤斑と小赤斑(LRS)合体と、よく似ていると述べています。
白斑が合体した19日、BA後方のSTB remnant中に白斑が出現して、今回の現象は
思わぬ方向に進んでいきます。この白斑は極めて明るく、メタンバンドでも顕著
で、対流性のプルームではないかと考えられています。白斑の後方には暗斑や白
斑がいくつも現れ、STB南縁(STBs)のジェットストリームに乗って後退するのが
観測されました。そのためこの現象は、白斑を発生源とする一種の攪乱現象と考
えられます。元は青いフィラメント領域だったSTB remnantは、この活動によっ
て暗いベルトの断片へと変化しています。合体に伴ってこのような現象が観測さ
れるのは、前代未聞です。
小白斑と合体した結果、BAは輪郭がやや不明瞭になる一方、前述の攪乱活動で濃
化したSTB remnantが後方に接するようになったため、相対的にBAのコントラス
トが低くなって、見辛くなっています。
※その他の木星面
SEBは淡化状態が続き、SEB攪乱(SEB Disturbance)の兆候は今のところ見られま
せん。青灰色のラインとして残っているSEB北組織(SEBn)も、月を追うごとに淡
くなっているようです。南組織(SEBs)は著しく淡化していますが、淡いオレンジ
色を帯びているので識別可能です。
大赤斑はオレンジ色、もしくは薄めのレンガ色で、濃度もしだいに増してきまし
た。縁に沿って濃くなっているので、卵形の輪郭が明瞭です。経度はついにII=
150°に到達しました。II=100°を越えたのは2005年1月頃でしたので、わずか5
年半で50°も後退してしまったことになります。また、大赤斑北側の赤斑湾(RS
bay)内部が、7月初めから白雲の活動によって明るくなっています。
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[図2] 大赤斑前方の木星面 撮像:山崎明宏氏(東京都、28cm) |
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STBは前述のSTB remnantから変化したBA後方の暗部に加えて、II=350〜80°の範
囲でも暗斑が連なった暗部が見られます。また、北組織(STBn)に沿ってジェット
ストリーム暗斑が多数存在しています。その南のSSTBは南半球で唯一の連続した
ベルトで、高気圧性の白斑(AWO)が9個あります。
幅広い北赤道縞(NEB)では、広い範囲でリフト(rit)の活動が見られ、ベルトが二
条になっています。NEB北部(NEBn)では、II=105°付近に長命な白斑WSZがあり、
目だっています。NEB南縁(NEBs)から赤道帯(EZ)へ伸びるフェストゥーン
(festoon)はほとんどありません。北温帯縞(NTB)は明瞭で、北北温帯縞(NNTB)も
概ね連続したベルトになってきましたが、II=250〜20°に範囲は乱れて混沌とし
ています。
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