※南赤道縞攪乱の発達
11月9日に発生した南赤道縞攪乱(SEB攪乱)は、順調に発達しており、淡化してい
たSEBが部分的に濃化復活しつつあります。
II=290°の発生源では、白斑や暗柱が次々に現れては前方北側に移動しながら、
斜めに傾いた暗部となり、12月中旬には長さ約50°の乱れた領域に成長していま
す。これが中央分枝と呼ばれる、攪乱主要部の活動です。最初に出現した白斑と
暗柱は、拡散した大きな明部と大きく傾いた暗柱として、11月下旬まで追跡され
ましたが、現在では崩壊してしまったようです。中央分枝内部は混沌としており、
メタンブライトな白斑が多く、特に中央分枝の前端部と攪乱発生源である後端付
近で頻繁に見られます。最初、中央分枝は一様に青灰色でしたが、最近はSEB本
来の茶褐色をした領域が出現しつつあります。
今回のSEB攪乱は、SEB南組織(SEBs)を後方に伝播する南分枝が活動的です。発生
源の南では次々に暗班が出現し、SEBsを1日当たり+3.5°というスピードで経度
増加方向に移動していて、12月12日には先端がII=50°付近まで達しています。
南分枝の暗班は形も間隔も不揃いで、12月には数個の暗班が合体し、2ヵ所で大
きな暗塊が出現しています。丸い暗班が規則正しく整然と後退していた2007年の
SEB攪乱とは、大きな違いです。南分枝の暗班群が大赤斑(GRS)に到達すると、大
赤斑は変形しながら淡化することが知られています。先端の暗班は1月上旬に大
赤斑に到達すると予想されますので注目です。
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[図1] SEB攪乱の3つの分枝活動 矢印は3つの分枝の先端を示す(上向き:中央分枝、右向き:南分枝、左向き:北分枝)。29日、6日、8日の黒点は衛星の影。 撮像:熊森照明氏(大阪府、28cm) |
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SEB北組織(SEBn)を前方へ伝わる北分枝の活動は、攪乱発生から20日近く、まっ
たく観測されませんでした。しかし、11月末に中央分枝前端部北側のSEBnが突然
濃化し、ようやく北分枝の活動が始まりました。このように、攪乱発生後しばら
く経過してから活動が始まるのは、過去のSEB攪乱でも何度か観測されている北
分枝の特徴です。北分枝はその後、急速に経度減少方向に伸張し、12月10日頃に
は大赤斑の北側を通過して、さらに前方へ進んでいます。この間の前進速度は極
めて速く、体系1のスピードに匹敵します。暗班が並ぶ南分枝とは異なり、北分
枝はSEBnが単調に濃化するだけで、暗班などの模様はほとんど見られません。
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[図2] SEB攪乱の発達 BAの前方で2つのAWOが接近している。NEBの白斑はWSZ。右端に大赤斑が見える。 撮像:クリストファー・ゴー氏(フィリピン、28cm)、熊森照明氏(大阪府、28cm)、阿久津富夫氏(フィリピン、35cm)、永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
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SEB攪乱は今後も活動を続け、SEBの濃化部がしだいに広がって行くと予想されま
すが、現在の活動領域とは別の経度で、新たに白斑や暗柱が出現し、別の攪乱領
域(第2攪乱)が形成される可能性があります。第2攪乱は、最初の攪乱から1〜2ヵ
月の間に発生しますので、しばらくは注意が必要です。
※その他の木星面の状況
木星面の他の領域では、大きな変化は見られません。大赤斑後方では、南温帯縞
北組織(STBn)を前進するジェットストリーム暗班が再び活発になり、11月下旬以
降、次々に大赤斑に押し寄せています。暗班は大赤斑南縁を通って前方へ進みま
すが、大部分は崩壊してしまうようです。大赤斑前方南側に赤みの強い領域が出
現したのは、これが原因と思われます。大赤斑自身は、相変わらず赤みが強いも
のの、輪郭が少し不明瞭になりました。上記の暗班群の影響かもしれません。経
度は、12月10日でII=161.3°と、後退を続けています。
北赤道縞(NEB)の北部では、2つの白斑が目立っています。ひとつはII=80°にあ
る長命な白斑WSZで、もうひとつは8月に合体して注目された白斑で、II=255°に
位置します。ベルトの中央よりには、バージ(barge)と呼ばれる赤茶色の暗班が
見られますが、最近は少し数が減って、目立つものは4個だけとなっています。
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