※南赤道縞攪乱の状況
南赤道縞攪乱(SEB攪乱)は、発生から2ヵ月余りが経過し、順調に発達を続けてい
ます。警戒された第2攪乱は、今のところ発生していません。過去の第2攪乱(第3、
第4を含む)は、どれも最初の攪乱から2ヶ月以内に発生しているので、今回は単
一の攪乱活動で終わると思われます。
1月に入り、SEB南組織(SEBs)を経度増加方向に伝わる南分枝の先端が、大赤斑に
到達しつつあるようです。大赤斑はSEB攪乱の南分枝の暗班群がぶつかることで、
変形・淡化することが知られています。攪乱発生前に見られたSEBsの鱗状パター
ンに由来する先端の30〜40°は、淡くなってよくわからないのですが、1月初め
には大赤斑に到達したようで、3日には赤斑湾(RS bay)の後端部分が暗班状に濃
くなっています。この暗班は13日になると、南熱帯(STrZ)を横切るアーチに変化
していて、注目されます。大赤斑本体は、以前に比べてやや淡く輪郭がぼやけて
きましたが、それほど大きな変化ではありません。
上記の淡い先端部の次には大きな暗塊が続いており、13日にはII=130°に達して
います。暗班群は1日当たり約+3.5°の割合で後退を続けていますので、1月半ば
過ぎには大赤斑にぶつかると予想されます。果たして大赤斑に劇的な変化が起こ
るか注目しましょう。
SEB北組織(SEBn)を経度減少方向に広がる北分枝は、1月10日までに木星面を一周
し、発生源の北側に戻ってきました。当初、北分枝ではSEBnが単純に濃化するの
みで、暗班などはほとんど見られませんでしたが、1月5日から8日にかけて、大
赤斑と中央分枝先端の間にのこぎりの歯のような暗班群が急速に形成されていま
す。
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[図1] SEB攪乱中央分枝の活動 撮像:最上聡氏(東京都、30cm) |
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SEB攪乱の本体となる中央分枝の活動は、II=230〜300°の範囲で斜めに傾いた暗
部として見られます。前方ほど細くなっていますが、前端に明瞭な段差があって、
北分枝との境界になっています。この領域の後端部分がSEB攪乱の発生源で、メ
タンブライトな白斑が繰り返し発生しています。また、中央分枝の前端部も活動
的な領域で、ここでもメタンブライトな白斑が現れます。白斑は前端のスロープ
に沿って大きな細長い明部に拡散、するとその中に新たな白斑が出現、といった
活動をしているようです。
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[図2] SEB攪乱の発達 左向きの三角は北分枝の先端、右向きの三角は南分枝の先端を示す。また、中央分枝の範囲を矢印で示した。 永長英夫氏(兵庫県、30cm)撮像・作成の展開図を筆者編集。 |
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※その他の木星面の状況
木星面の他の領域では、大きな変化は見られません。II=86.6°(3日)に位置する
BAは、周囲を暗部に囲まれた薄暗い白斑ですが、著しく小さくなり、長径は約7°
しかありません。
赤道帯(EZ)は相変わらず明るく、青いフィラメント状の模様ばかりで、顕著なフ
ェストゥーン(festoon)はほとんどありません。北赤道縞(NEB)は幅広い赤茶色の
ベルトで、リフト活動は消失してしまいました。ベルトの北側には、白斑が3個
と4〜5個のバージ(barge)が存在します。
北温帯縞(NTB)は南組織が淡くなっています。英国天文協会(BAA)のロジャース氏
(John Rogers)は、木星面最速であるNTB南組織(NTBs)のジェットストリームが加
速して、2007年のアウトブレーク現象(NTBs outbreak)直前と同じ状況になって
いるため、近いうちに再びアウトブレークが起こると、アラートを発しています。
観測の際には、NTBs上にメタンブライトな白斑が発生していないか、十分に注意
してください。
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